ロビンソン 

別に不満も無いけれど、何時からか見飽きてしまったいつもの交差点がぼんやりと見える。
それはこの部屋の窓が薄汚れているのか、少しばかり曇り空のせいなのか。
どちらかなんて、皆目検討も付かないし、あたしは知らない。
月すら見えないし、きっと月からもあたしは見えやしないだろう。

廻る季節は淋しいのだ、進む人間を追うのは容易くない。

私の布団に丸まり眠るペルシアン。
あの時、ボロ雑巾のようになっても呼吸を止めないニャースに私は彼と何処か似ているような気がしたんだ、確か。
もしかすると、それは気まぐれだったのかもしれない。
けれど無理矢理に抱き上げて、汚くて弱りきった小さなこの子が何故だか堪らなく思えて私は頬摺りをした。
そりゃあ、警戒心むき出しの野生のニャースが簡単に私の懐に収まるワケなんか無かったけど、無性にいとおしく思えて。

彼は夢ばかりを見ていた。
きっと彼自身も含めて誰にも触れらない、夢ばかりを散りばめたあの人の望む世界を作ろうとしていたんだろう。
その夢が受け入れられることはなかったし、あたしでもそれで良かったのかなと思える。
背伸びをする子供なら良かったのに、事が大きすぎた。

懐かしい優しさも、大げさなまでに楽しんだ談笑も、同じ思いを同じ時間に有り続けることだけで幸せで居られた。
あたし達しか知らなくていい、ありふれていて簡単な魔法すら消えてしまうように、消してしまおうと、彼は痩せた背中で一人背負っていた。
まるで大きな力に操られて空を浮遊する塵のようで。風に乗ってしまえば吹かれて行方のない彼方へと行ってしまうような気がした。
今なら、あたしも彼の目指した夢にだって行けるような、そんな気がした。


ルララ、宇宙の風に乗る。
(彼は“ロケット”を語る、)




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