人畜無害は見た目だけ 

「ランスさん、痛いです。」

ベッドの柵に押さえ付けられた手首が痛い。
きっと痣がまた一つ増えるのだろう、これでも、一応は女の子なのでその辺りは片隅にでも構わないから気に留めておいてくれませんかね。
頭のどこかでぼんやりとどうでもよい事を考えて、現状に気が付いてしまわないように努める。

「ナマエ、貴方が悪いんです。」

本当は、間違いなく、理由なんて無いんだと思います。
言うなれば、ただのこじつけに過ぎません。知っているんです。
私と彼の関係なんて、嫉妬に燃えたり愛しくて手放せないような、優しいものじゃないので。
依存性の高い薬物に蝕まれたように、壊していくだけの関係であって欲しい。
余計なものなんて、もうこれ以上は目にもしたくないっていうのに。

「私が悪いんですね、ごめんなさい。」

「思ってもない事を、よくも簡単に口にしますね。」

「そう?そう思いますか、そっかぁ…」

首筋に顔を埋めたままで私に気付かれまいと泣く、どこか螺子の緩んでしまっている不器用なこの人を突き放すなんて到底できっこありません。
決して私が小心者だからなんかじゃなくて。事実、小心者ではあるけれど。
幸か不幸か見え隠れする、愛情らしきものにも私は気付いてしまっている。それも、知っていますから。



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