「おィ…」
『………』
「おィこら」
『……………』
「此方向けよ?」
バチン――――…
乾いた音が一瞬にして耳を抜けていく。
一方通行が高く振り上げた手はルノンの左頬を勢い良く弾いた。
ソファに座っていたルノンが反動でそこから転げ落ちる。
叩かれた左頬に自分の左手を重ね、床に叩きつけられた状態で一方通行を見上げれば、心底嬉しそうに…基楽しそう笑っている。
「良い様だなおィ」
そう言って口角を上げた一方通行は、床に広がっているルノンの長い白銀の髪を一束すくい上げて口許に持って行く。
その手つきは、まるでさっきの平手打ちが嘘だったかのようにして振る舞っているようだ。
しかし、勿論のこと現実は違う。
一方通行はルノンの髪から手を離す、先程の手つきとは真逆で乱雑にルノンの前髪を鷲掴みにした。
そのままそれを持ち上げる。
なるべくその痛みに逆らわないよう、ルノンもは上半身を持ち上げた。
これには流石のルノンも徐々に顔を歪めている。
「くく…良い面してるぜェ?鏡見せてやろうかァ?あン?」
これでもかと言うほどに厭らしく笑った一方通行は自分で叩いたルノンの頬に手を沿わせると、ルノンの返事を聞くことなくルノンの髪を引っ張り洗面所に連れ引いた。
「っ…」
ルノンが痛みからか目尻に僅かな涙を浮かべ一方通行の手首を掴もうとしている。
それでさえ気に食わないのか、ルノンの手を叩き落とす。
洗面所につくなりルノンの髪を勢い良く引き鏡の目の前に貼り出せば、ルノンは鏡の方向から目を逸らした。
一方通行はそんなルノンを見てちゃんと見ろ、と呟く様に言えば、掴んでいたルノンの前髪を放して隣から背後に周りルノンの腰を抱く。
大きめの鏡にはその姿もしっかりと移っていた。
そして、一方通行はルノンの服に手を掛け下着と一緒に持ち上げると、わざらとらくルノンの胸を鏡に押し当てた。
「…ひ…ぁ…」
ひんやりとした感覚が、ルノンの肌を刺激する。
その後ろで一方通行がルノンの項に舌を這わせているのが、鏡に貼り付けられているせいで嫌でも見えてしまう。
「可愛い声で泣けよ…ちゃんと出来たらもっとお前が気持ちとこぶっ叩いてやンからよォ」
にやにやと含み笑いを浮かべて言った一方通行は、ルノンの身体を鏡から離すと、再び左頬目掛けて自分の右手を降り下ろした。
たたく
(君の頬に)(まっしぐら)
110116