どうやら明日は初雪が降るようだ。 テレビのニュースでは、どこか大袈裟に言われたていると思っていた冬の寒さが妙に身に染みる。 大したことはないだろうと薄着で出てきたは良いが、予想外に寒い。 あまりの寒さにくだらないが反射を発動させてしまっている。 ふっ、と自分が家を出るのより一歩先に家を後にしたルノンが頭に浮かんだ。 自分の記憶が正しければ、普段通りのわかりづらい構造をした衣装に身を包んでいた。 多分、寒い。 「露出度高ェよ…」 想像すると、自分以上に寒そうでポツリと声を漏らす。 反射する以前の凍えた手を寒さ凌ぎに自分のズボンのポケットに突っ込んだ一方通行は、見えて来たコンビニに向かって進んで行った。 *** 「はぁー…」 冷たい空気の中に、自分の息を吐き出すルノン。 白い吐息が宙を浮いた。 「寒い…」 鼻を赤くし、口の前に悴んだ手を持っていき息をかける。 しかし、一瞬の温もりは直ぐに奪われてしまう。 外への用は済んだ為に、研究所へと向かうことにした。 *** 「…?」 研究所へと向かう途中、良く見知った人物がコンビニから出てきて、その後ろ姿が目に入った。 それを一時眺めていると、相手も此方に気付いたのか、紅い瞳と目が合う。 お互い見詰め合っていれば、相手である一方通行が此方に歩き近づいて来た。 「………」 「随分寒そうな格好してンじゃねェかルノンちゃんよォ…」 「貴方も寒そうです…」 歩きながら言って来た一方通行に同じ意味の言葉を返す。 「馬鹿かオマエ?この一方通行さんをなンだと思ってンだよ…寧ろ暑ィ」 「そうですか…」 何かを考える様にして再び手に息を吹き掛ける。 指先が赤く霜焼けていて、見るからに冷たそうだ。 「………」 そんな仕草をジッと見詰め、反射を解いてはルノンの冷えた指先に手を伸ばす。 ルノンは一歩後ずさったが、ばつの悪そうな顔をして一方通行の顔色を伺っている。 ルノンが触られるのを苦手なことは知っていた。 「まだ苦手なンかよ」 聞いて見ればフルフルと顔を横に往復させる。その行動に一方通行はふーん、とした顔をするとルノンの手首を荒々しく掴み、自分の元へ引き込んだ。 「っ!?」 平衡感覚を失ったルノンは一方通行にされるがまま。 まるでリードをつけられた猫の様にぎこちなく一方通行の胸に倒れ込んだ。 「暖けェ…」 反射を解いて内心寒さに震えていた一方通行は、ルノンの身体を自身の腕で包み込む。 ルノンの体温の高さが妙に心地よくて、そのままの状態でルノンの顔を盗み見ようとした。 「………」 「っ…」 しかし…額を彼の胸にあて、地面の方向に視線を向けている為に表情が見えないのだ。 「おィ…」 「………」 上を向け、と言う意を込めて声を発するが、ルノンはピクッ…と反応するだけで、上を向くことはなかった。 不服そうな視線でルノンの後頭部を睨み付ける。 その一点を見つめていたせいか、自分達を取り囲むこの空間に何かが訪れようこと等知りもしない。 「ルノン…」 「…は…ぃ」 語尾を小さくして返事を返すのだが、視線を上には向けない。 ルノンにも聞こえない程度に音を立て舌打ち。 「上見ろ…」 「……」 ゆっくりと、正にハイスピードカメラでも使ったかの様な動きで、視線を反らしたルノンが顔だけ上に向かせる。 そして………… 「…っ!」 冷えた唇と少し乾燥した唇が、その場で交わった。 二人を取り巻く空間で、白く輝かしい宝石が散りばめられているとも知らずに―――――…。 初雪が降るまでに (君に触れられて) (良かった) 110225 |