「財前くんって、いつも何聞いてんねやろうな」



休み時間、いつも通り他愛もない話の途中で友人の1人が切り出した、クラスで1番イケメンの財前くんの話題。あたしは思わず教室の真ん中の席に座る彼の方に視線を向けた。それは、他の友人も同じだったようで



「…あたし洋楽希望」
「希望ってなんやねん、希望って」
「財前くん、英語得意やんか」
「意外とアニソンやったりしてな」
「いやや! それは引く!」



さっきまで新作のお菓子がどうのこうの話してたのに、気付けば話題は財前くん一色になった。( 本人に聞こえたらどうすんねん )あたしはと言うと、大して彼に興味があるわけでもないので、和気あいあいと盛り上がる3人の話に耳を傾けるだけでいた。

実は先日の席替えで財前くんとは隣の席になったわけだけど、まだ一回も話したことはない。だって授業中は寝てることが多いし、休み時間になるとヘッドホン取り出して曲聞き出すし、というか常時しかめっ面してるから、話し掛けられないというのが本音。確かにイケメンかもしれないけど、あんな“関わらんといてください”オーラ出してたら、関わりたくなくなるよねー。

( …待てよ? )もしかして、この、何聞いてるのかってゆう無意味な話題は、彼と話すきっかけになるんでない?



「財前くんってさ、いつも、何聞いとんの?」
「は?」



掃除時間、2人になったのを見計らって尋ねてみる。そしたら案の定、絶対零度の声で返事されたから、もしかしたら話せるかも! なんて盛り上がってた自分を叱咤したい気持ちになった。

そりゃそうだよね。同じクラスになってから一度も話したことないのに、いきなり「何聞いとんのー?」なんて聞かれたら、温厚なあたしでも一歩引く。きっと変な人って思われたんだろうなー…

そんなあたしの後悔とは裏腹に、「ん、」財前はあたしの方に、首にかけていたヘッドホンを差し出していた。



「え、」
「気になんねんやろ。ほら」
「え、あ、はい」



これは、装着しろってこと、よね。

差し出されたそれを受け取って、自分の耳に当てる。学ランの右ポケットに入ってた音楽プレイヤーのボタンが押されて、両耳に初めて聞く音が流れてきた。



「……英語や」
「アホ、日本語や」
「え、ホンマにっ?」
「まあ英語も歌っとるけど」
「なんだ。……ええ歌やね」



誰の歌か分からないし、財前くんが日本語という歌詞は相変わらず英語にしか聞こえないけど、メロディとか雰囲気とか、あたしは好きな音楽やった。

素直に感想を述べると、財前くんはすこしビックリしたような顔をして、「せやろ」って笑った。




その笑顔に釘付けになった




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -