入れない。入らない。入りたくない。入りづらい。

LHRも終わった放課後、部活に行く前に侑士を迎えに行くのが日課になってるわけだけど、今の俺は教室入り口のドアを開けられないでいる。何故かというと、もちろん昼間の件があるからで、( 早く侑士出てこいよっ! )教室に入ったら絶対佐々木いる。さっきの今で佐々木に会うのは非常に恥ずかしい。そうだ、侑士が出てくれば教室に入らずに済むんだという考えに至った俺は、おとなしく廊下で待つことにした。

次々と教室から同級生たちが出てくる。自慢じゃないけど友達は多いほうだから、ちょっとした会話も交えながら侑士を待つこと数分間。



「玲奈、今日部活だっけ?」
「ううん、今日は―――あ、」
「あ、」



俺はすっかり忘れていた。佐々木もこのドアを使って、教室から出てくる可能性があるということを。( 失敗したー! )ドアの正面で待ってたから、必然的に目が合ってしまう。途端に顔が赤くなるのを感じた。



「忍足くん、待ってるの?」
「お、おう」
「今帰る準備してたよ」



わざわざ俺の前に来て、話してくれる佐々木。人と話すときは、きちんと目を見て話しなさい。小さい頃から母さんにうるさく言われてたけど、どうも佐々木の目を見ることはできなくて、俺はずっと下を向いたままだ。( 感じわりー )さすがにずっと下を向いてるのは失礼だと思い、会話が途切れたのを見計らって顔を上げる。そしたら思いっきり佐々木と目が合ってしまって、俺が逸らすより先に、顔を真っ赤にさせた佐々木が下を向いていた。

俺も背高くないけど、佐々木はもっと小さい。俺も髪は直毛だけど、佐々木も真っ直ぐだ。少しだけ見える耳は赤くて、これも俺と同じだった。

ふと、佐々木が教室から出てきたなら俺が教室に入ればいいんだと思い立って、「じゃーな」小さく聞こえるぐらいの声で挨拶をして、佐々木の横を抜ける。入ろうとドアに手をかけたところで、彼女から名前を呼ばれたから、ビックリして振り向いた。



「な、なんだよ」
「ココア」
「は?」
「ココア、ありがとうっ。それじゃあっ」



佐々木は勢いよく頭を下げて、隣にいた友達は放置したまま駆けていく。俺は、ゆでダコのように顔を赤くさせることしかできなかった。



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