年も明けて、冬休みが終わった。休み明けのお祭り気分が少しずつ緊張感に変わってきて、ようやく日常が戻りつつある頃。

部活からは完全に先輩たちがいなくなって、2年生と1年生のみの活動が始まる。新しい部長はまだ頼りないし( 毒舌は健在だけど )部自体が、ぽっかりと穴が空いたみたいに、充実とはかけ離れたものになってきていた。このままじゃアカン、今年こそ全国優勝せなアカンのに。焦りはどんどん積もるばかりで、重く固まったそれは、あたしたちの胸の中に蓄積されていく。先輩らも、最初はこんな気持ちやったんやろうか。

それでも、新しいチームでがんばっていこうと、部員全員が前を向いて躍起になっているときだった。憧れの白石部長の進路先を聞いたのは。



「ぶちょー」
「ん? おお、名字やん」



元気やったかー? 部長の左手が、あたしの頭をふわふわと撫でる。久しぶりの感じに少しドキドキして、クリーム色のセーターの裾をギュッと握った。

部長が図書室で勉強してることは、図書委員である財前から聞いていた情報だった。放課後の図書室には誰もいなくて、あたしと部長の2人きり。そんなの、部室で何度だって経験したシチュエーションなのに、場所が違うだけでこんなにもドキドキするんだ。

あたしが来たからか、部長は勉強道具を全部閉じて、前に座るように促してくれる。その優しさに甘えながら、参考書の表紙をそっと盗み見た。そこに書いてあったのは、偏差値がすごく高い進学校。



「…受験勉強、大変ですか?」
「せやなぁ。いくら推薦やからって、手抜きしたらアカンしな」
「部長頭ええし、楽勝やん」
「ははっ、おおきに」



ニコニコ笑う部長に、心がチクンと痛む。ホントは応援したいのに、受験に落ちてほしくて、あたしでも行けるような高校に進路変更してほしくて、そんなワガママを押しつけてしまいそうになるから。( 性格悪いな、自分 )もしあたしがワガママ言って泣いても、部長は温かく包んでくれるんやろうなあ。困らせるようなことはしたくないけど。

他愛もない話をしていると、完全下校時刻を知らせるチャイムがなる。すみません。思わず謝ってしまうと、部長は眉を八の字にして笑った。



「いい息抜きになったわ。最近勉強詰めやったからなあ」
「……部長、」
「ん?」


「受験、頑張ってくださいね」
「…おおきに」



泣きそうになるのを必死にこらえたせいか、声が震える。そんなのもなかったことにしてくれる、部長の優しさが温かかった。



流れ星より不確かな


流れ星は願い事を3回唱えれば叶えてくれるというけれど、あたしにはそんなこと、できそうにない









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