キラキラ光るイルミネーション。ショーウィンドウに並んでいるサンタさん。手をつないで歩く恋人たち…とは程遠い、教室隅のあたしたち。



「なんで居残りに付き合わなきゃいけないの…」
「なー、ここ分かんね」
「自分で考えろ!」



教科書を丸めて、赤い頭をパコンと一叩き。打ち所がよかったのか、両手で頭を抱え込んで痛がる彼を尻目に、あたしは窓の外を見てため息ついた。

『放課後デートしようぜぃ。』そんな誘いを受けたのは昼休みのときで、すごく、すごく喜んだあたし。イルミネーション見たり、スタバでまったりしたり、ゆっくり街を歩きながらいろんな話したり…。そんなデートがしたかったのに。

放課後になってクラスに迎えに行けば、待っていたのは課題を前に頭を抱える我が彼氏。「小テストで赤点取ったから居残りぜよ」嫌味な笑顔を向ける仁王に、言い返す力も残ってなかった。



「機嫌直せって」
「いいから。早く終わらせて」
「……あい」



分っかんねー。そう言いながら、ブン太は左手で頭をかいて、右手で問題と向き合う。いつもなら勉強できないブン太も好きだし、分からないながらに真剣に考えるブン太もかわいいと思えるし、教えてあげる時間もすごく楽しいんだけど、今のあたしには疎ましいとしか思えない。そんな冷たい自分が嫌で、ブン太に当たる自分はもっと嫌い。

携帯を弄りながら、行き場のない思いをため息にすれば、首もとにふわりと優しい温もりが降ってきた。



「……マフラー」
「さっきから、鼻すすってたから。風邪引いた?」
「……うん」
「教室寒いよな、もうちょい待ってて」
「……うん」



あたしって単純。ホントはイルミネーションとかデートとかどうでもよくて、ただ構ってもらえないのが淋しかっただけで。こうやって少し手が触れただけで、さっきまでの嫌な気持ちが嘘みたいになくなっちゃうの。多分ブン太は、あたしの気持ちに気付いてたんだろうなあ。( 悔しいけど )

イルミネーション、日曜日行きたいな。マフラーに顔を埋めて言うと、ブン太は 任せろぃ! って笑った。




帰り道には、手をつなぎました







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