「隣、ええ?」



水曜日、5時限目、選択授業。
小論文が苦手なあたしは、受験対策も兼ねて小論文の授業を選択したけど、そしたら見事に友達と離れてしまった。周りも知ってる人は誰もいないし。( 失敗したなあ… )選んだ席は窓際の一番後ろ。誰とも話すつもりはないし、1人で授業に集中するにはいいかなって思って。

小論文はあまり人気ないらしく、クラスに入ってくる人も少ない。周りもまばらに席が空いてて、あたしの隣も例に漏れず空席のまま。( さすがにそれは淋しいかもしれへん )このまま誰も座らずに授業が始まると思ってた、んだけど。



「し、白石くん」
「あれ、誰か来るんやった?」
「あ、ううん! ええよ、全然!」



隣に来たのは間違いなく白石くんで、吃りながら返事したあたしに、彼はふんわり笑いながら「おおきに」と言った。

どうしよう。誰も来ないと思ってたのに、まさかの白石くんが来てしまった。白石くんといえば学校一のイケメンアイドルで、あたしも目の保養にさせていただいている。そんな彼が隣に来れば、あたしの決して強くない集中力は簡単に途切れてしまうわけで…( 50分も持つんやろうか… )授業開始から10分、早くも集中力はピンチである。

9月の、少し秋が近付いてきた風が教室を通り抜ける。「なあ、」小声で話し掛けてきた白石くんの方を、風に吹かれて乱れた前髪を手で押さえたまま向いた。



「な、何?」
「名字さんって、香水つけとる?」
「いや、つけてへんけど…なんで?」
「今ええ匂いしたから…じゃあ、シャンプーやんな。ええ匂いやなー…あ、先生見とる」



さっと前を向いて、シャーペンをノートに走らせる白石くん。あたしの耳には、先生の声より先刻の白石くんの声の方が強く残っていて、( …ええ匂い、て… )残り40分の間、火照る顔を隠すのに必死だった。




朝シャンしとってよかったわ







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