一人掛けのソファに座る大居の前を寛げ、一心不乱に舌を使う青年を見遣る。戸森は美しく成長した。匂い立つような色気と憂いのある青年へと。理知的な印象を与えるこの若い美青年が艶やかな唇の狭間に男根を咥え込んで興奮に目を潤ませるなど、誰も想像しないだろう。
 後ろを使うようになったのは戸森が高校を卒業し、雇用関係を結んでからだ。18という年齢を越えた機に戸森から請われた。指を挿入して刺激する程度はそれまでもしていたし、素股もしょっちゅう行っていたので、すっかり調教しきった気持ちでいたが、後孔で快感を得て狂ったように乱れる戸森を見た時、今までの行為は戯れに過ぎなかったのだと知った。大居が得た快楽もまた段違いだった。
「戸森、もう良い、乗れ」
 命じると戸森は名残惜しそうに口を離し、口元を指先で拭いながら立ち上がってベルトを外した。きっちりと身につけたスーツの下衣のみを半端に脱ぎ、大居の太腿に跨って腰を下ろす。勃ち上がっているものに手を伸ばし、緩やかに扱くと、もどかしげに腰を揺らしながら溜息を吐く。
「何日ぶりだったかな」
「あ…五日、ぶりです…」
「そうか、辛かったか?」
「はい」
 こくりと素直に頷く。視線は大居のものに釘づけだ。
「もちろんその間一回も射精してないだろうな?」
「い、一回だけ」
「…何?」
 珍しく口ごもりながらの返答に手を止めて鋭く問うと、戸森は頬を紅潮させて頭を垂れた。
「昨日、夢精を…申し訳ございません」
「どんな夢で?」
「お客様にお茶をお出しした時に、ご主人様がご命令を…お客様にご奉仕しろと」
「なんだ、そんな願望があるのか。正夢にしてやれば良かったな」
 唇の端を引き上げると黙ってふるふると首を振る。性感に緩んだ顔とネクタイをきっちり締めた上半身と露わになった下半身とがそれぞれちぐはぐで、業務中は一分の隙も見せない彼とのギャップに興奮する。
「お前を他の男に犯させてそれを見るというのも良さそうだ」
「お戯れを」
「本気だと言ったら?」
 お前は逆らえないだろう? と言外に仄めかしたが、戸森は緩やかに首を振った。
「ご主人様でなくては頂点に達せません。私の身体はご主人様のものですから」
 とろりと微笑む。うっかりそれにドキリとした。よく考えれば他の男に触れさせるなど大居が耐えられない。滴るような若い色気は主人である自分だけのものだ。自分のために開発した肉体と精神なのだから。
 もう少し焦らしてやろうと思っていたが、先に我慢ができなくなってしまった。
「ねだってみろ」
 命じると蕩けた目がそっと大居の表情を窺い、「ご主人様、」と口にする。普段の呼称は『旦那様』だが、行為の最中は『ご主人様』と呼ばせている。
「ご主人様を下さい」
「俺の何を? どこに?」
「この、ご主人様の太いおちんぽを…私のお尻に…」
 少年が恥じらいながらも命じられるままに口にする淫語も良かったが、成熟しつつある青年が相手を煽ることを目的として口にするのもまた良い。尻を上げさせて望み通りにしてやると、細い身体は打ち震えた。
「は…あ…ぁッ」
 まず一回、射精。
 挿入の衝撃に未だびくびくと呼応しているところを猛然と突き上げる。膝の上で跳ねる動きに合わせて声も跳ねる。
「あぁ、ご主人様、そこ、気持ちいいですっ」
「どう気持ちいい?」
「ご主人様のものが、前立腺グリグリってこすってっ、あっあっ」
「ずっとこうされたかったんだろう」
「んッ、はい、ずっと、仕事中ずっと期待してました…っぁ、ン」
「そんなに声を出したら廊下まで聞こえてしまうよ? お前がどんなご奉仕をしているのか他の下働きの者に知れてもいいのか?」
「あ、ァ、そのような、事は…っ、ふ、また、またイキます…っ!」
「堪え性の無いやつだ」
「申し訳ございませっ、ん、あん、あぁア!」
 二度目を放つ。絞るような動きに堪らず大居も中に放った。はあはあと荒い息をしながら戸森はまだ物足りなさそうに上半身をくねらせる。
「降りろ。そこへ膝をついて自慰をしろ」
「はい…ア…」
 喪失の感触に鼻から抜けるような甘い声を漏らしつつ、戸森が足元へ跪く。日頃如才なく仕事をこなす手指が己の露わな劣情を捉え、本能的な動きで上下に動き出す。ぐちゅぐちゅと浅ましい水音が立った。

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