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 昼食後、14時から女装コンテストのステージだった。
 出場者は3学年合わせて9人。音楽に合わせて可愛らしいポーズをとるという苦行を耐えたのだが、結果は3位という微妙な結果だった。上位2人はフルメイクで臨んでいたので順当だが、負けたら負けたで悔しいものだ。
 実行委員からもらったシートタイプの化粧落としを持って英語学習室の扉をガラガラ開けたら、先客がいた。
 入口に背を向けて床にあぐらをかいていた半袖シャツの背中がびくっと派手に揺れ、鋭い視線がこちらに飛んできた。
「えっと、ごめ…ん?」
 咄嗟に謝りつつ上履きを脱いで教室に入る。大貴はこちらに背中を見せたまま「おう」と低く挨拶した。何してたんだろう。
「女コン3位だったー」
「観てた」
「あ、観てたの? いやー参った。つーかタイツって暑いんだな」
 黒いタイツを脚から引っこ抜いて床に放り出したところで、大貴が立ちあがった。すたすたと出入り口に向かって行くのでトイレにでも行くのかと思ったら、なぜか何も言わずに内鍵をかけた。
 そして、
「わり、足だけ貸して」
 と苦しげな顔で言った。
「は?」
 意味が解らず聞き返すと、ジェスチャーで座るように示された。訝しく思いつつ前方に脚を投げ出すようにしてぺたんと座り込む。目線の高さが大貴の股間あたりに来て、その時初めて異変に気付いた。
 ギンッギンなんだけど。
「クソ、お前元々可愛い上に女装するとすげータイプの顔になるわ」
 眉間に皺を作りつつ大貴が座って制服のズボンの前を開ける。
(で、でけぇ)
 完全に負けた…と顔をひきつらせる俺に構わず、大貴は俺の足をむんずと掴むと、そそりたつモノを挟み込んだ。ちょうど土踏まずに擦り付けられる形だ。そのまま上下に動かされる。
 思わず釘付けになった。俺見てこんななってるのかコレ。
 大貴は薄く頬を紅潮させながら視線を下に落とし、一心不乱に手を動かす。熱い、という感触だけが占めていた足の裏が、次第にぬるぬると僅かなぬめりけを帯び始めた。ふぅっと細く息を吐いた大貴が、ふとこちらを見て呟いた。
「陸、勃ってる」
 うわあ、俺の身体馬鹿だ。死ね。
 プリーツスカートを押し上げて俺のは確かに主張していた。がばっと脚を開いた体勢なので隠しようもない。いや仕方ない、男相手とはいえ自分の足使ってオナニーとかされたら多少は反応するだろう、普通。
「触っていい…?」
「え、や、いや」
 自分で処理できます。と遠慮申し上げる前に大貴の手が伸びてきて、布越しに掴まれた。
「ひっ」
 初めて感じる他人の手の感触。かあっと全身が熱を持つ。揉むように刺激されて、下着の中でどんどん完全体に近づいていくのがわかった。布に阻まれて大貴の手つきが見えないのがドキドキする。思考が溶けて行く。
 スカートがめくれて太腿が下着ギリギリのところまであらわになっている。下着なんて着替えの時に平気で晒したことがあるのに、なんでチラッと見せる方がこんなに恥ずかしいんだろう。
「…かわいい…」
 大貴の顔が近づいてくるのをぼんやり眺めていたら、キスされた。
「や、やだ、大貴」
 顔を背けたら「陸」と耳元で熱っぽく囁かれ、上半身を押し倒された。覆いかぶさってくる身体の厚みに焦燥に似たものを覚える。片手は俺を扱き続けながら、首筋に唇をつけて音を立ててキスを繰り返す。
「やだってぇ…」
 身を捩ってゆるい抵抗を試みるものの難なく抑え込まれて、手がスカートの中に潜り込んで下着を引き下ろしにかかる。本当に女の子になったみたいな気分だ。ひらひらと腰回りを覆うだけの布地の無防備さ。その中に他人の侵略を許す緊張感。ずり下ろされた下着から勢いよく飛び出す感触に、声を上げそうになった。
「すげ、もうカチカチ」
 直接触れて、大きな手で、長いストロークで扱きあげられると、もう堪らなかった。
「女子高生がこんなんつけてるとかエロすぎ」
「あ、やん、やあ」
「もっと声出して…気持ちいい?」
「きもちい、きもちいよぉ」
 訳がわからなくなりながら問いかけられた言葉を繰り返す。はあっと大貴が熱い息を吐いた。
「陸…俯せんなって腰上げて」
「……? こう…?」
 身体を反転させてもぞもぞと脚を動かして膝を立て、尻を突き出すような恰好を取る。汗をかいた太腿にスカートがまとわりつく。背後に膝立ちになった大貴は、ぐい、と股間を押し付けて来た。下半身が密着してどきっとする。大貴の先端が布越しに尻の割れ目をなぞった。
 うわ、俺、犯されてるみたい。
 あろうことかそう考えた瞬間に、射精した。びゅくびゅくと床に白濁が散る。
「あん…あっ、あっ…」
「すげ、これでイクとかマジで女の子じゃん」
 大貴が背後で笑いながら大貴の腰を掴んで律動を始めた。揺らされる度にイッたばかりのものから出きらなかった分がちょっとずつ滴って、それが最高に気持ち良くて泣き声を上げてしまった。もっと、もっと、とねだりたくなる。スカートが揺れて脚をこする感触すら気持ちいい。
 下半身が意思と関係なく勝手に動いて、セックスしてるみたいだった。
「あ、陸、出すよ?」
 上ずった声で大貴が言って、直後に腰が離れた。スカートの上に放ったらしい、一拍置いて「っあー…」と満足げな溜息が聞こえた。俺はひくひくと震えながらそれを享受していた。

 その後の後始末が大変だったことは言うまでもない。
 制服を貸してくれた女子にクリーニングに出して返すと言ったら「え、別にいいよ」と言われたがそういう訳にもいかない。濡れティッシュで必死に拭いはしたが白っぽい跡が残っていたし、何より臭いが…。女子の制服をクリーニングに出しに行くというのもこっぱずかしかったがこの際そんなことも言っていられなかった。
 大貴とはあれからも普通につるんでいるが、時々ぼうっと回想してしまう。あの手がどんな風に動いたか、唇がどこに触れたか、クールな大貴がどれだけ熱っぽく囁いたか――
 思い出すたびにトイレに駆け込む羽目になるのだが、そんな俺を大貴がじっと見ている気がして仕方ない。

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