09





しばらく、シズちゃんをまともに見ていない。

あれから走って帰って…。
ふて寝して一日をダラダラ過ごしていた。

さすがに、次の日からはちゃんと登校するようになったけど、シズちゃんを避けてばかりだ。

向こうからは少しも話しかけて来ないし、…自分が避けてるからだろうけど。
だけどシズちゃんが、あんな事をしたのは他意の無い事。そんな事実が嫌という程突き付けられてどうしたら良いのか分からなくなる。

こんな気持ちなるなら、いっその事全て忘れよう。なんて思えば思うほどそれは頭から離れなくて。


諦める、なんてそんな事出来ない。


けれど、この状況をどうしたら良いか分からなくて___。


放課後、暫く図書室で本を読んで帰ろうと教室に戻り、心臓が締め付けられるような錯覚に陥った。


教室に、キラキラ光る金色の髪。

「シズちゃ…ん」

カーテンが微かに揺れる。
空から降ってくるような橙色の日差しが教室内に降り注いでいて髪の毛に反射している。
そっ、と近付く。


シズちゃんはあの時、どんな想いで俺に触れたんだろう。
俺にとっては、きっと一生忘れないような出来事だったのに。

こんなにも、好きなのに。


「シズちゃん」

髪をそっと撫でる。
起こさないように、慎重に。
さらさらした金髪が心地良くて胸が痛くなる。


「好きだよ…、シズちゃん」


そう聞こえるか聞こえないかの掠れた声で呟いて___。





気付いたら俺は、キスをしていた。







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