◎ss3
「あーー! 疲れたー!!」
そんな、疲労感を惜しみもせず滲ませた声が響く。
屋上で、寝転がり夕焼け空を見上げる。
橙から紫に変わる空は不思議なグラデーションで、凄く神秘的だ。
「ねぇ、シズちゃん」
「…そうだな」
頭上から降ってくる声の方に視線をやると、光がキラキラ黒髪に輝いている。
めったに見ることの出来ない、いや、俺には見せることの無い笑顔がそこにあって動揺してしまう。
それを隠すように目を閉じ今日あった出来事を思い出してみる。
朝早くから、家のチャイムが何度も鳴りブチ切れ寸前の俺に爛々とした笑顔で叫んだ臨也。
「今日、体育大会だよ!!」
俺達は、体育大会なんて柄じゃないだろ。と呟き二度寝しようとドアを閉めようとすると、急に不機嫌になり「そっかー、シズちゃんは三年生最後の体育大会も出ないのかー…、じゃあしばらくはイチャイチャ無しね」と言われてしまい仕方なく出る事になった。
臨也と種目も大体被っていて、いつもみたいな喧嘩の延長という形で柄にもなく楽しんでしまった気がする。
まぁ、もうこれで体育大会なんかする事無いだろうしな…無事卒業出来れば。
こういうのもたまには良いかもな、なんて思いながら空を見つめる。
と、一面空だった視界が臨也によって妨げられる。
「ね、楽しかったでしよー?」
「…まぁな」
そう言うと、ふふんと得意気に胸を逸らしそして俺の横に寝転んだ。
心地よい風を感じて、こういうのも良いんじゃねえか、なんて思ってしまったのだった。
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