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静雄side








「シズ…、ちゃん、……入る?」


パニックになった。
雨で匂いが消えていて、今まで気付かなかった。…何て返せば良いんだ?
臨也の顔を見ていると、昨日の事を思い出してしまい心臓が高鳴る。


というか入るって、相合い傘…なのか!?
そっちの方が余計パニックになってしまう。

色々想像してしまって何も返せなくなった俺に、何を思ったのか、
目の前の男はほほを赤らめつつも少し寂しそうな表情をして、上擦った声でボソボソ呟いた。


「嫌なら……良いけど」

…なんでこんなにも可愛いんだ。
 そう思わせるくらい、男の俺からも魅力的で。
無意識に頷いて、傘の中へを入っていった。


歩き出したが、会話はまったくない。
そりゃそうだろう。 普段はお互い殺しあうような犬猿の仲なのに
一つの傘に二人がおとなしく入って歩いているのだから。
同じ高校に通っている生徒が見たら、驚いて周りの人に言いふらす様な光景である。


肩と肩がコツンとぶつかる度、臨也は恥ずかしそうに俯く。
その仕草がすごく可愛くて、胸が締め付けられる様な想いになる。

_____なんだ、この気持ちは。

まるで小学校での、同級生の女の子を好きだった時みたいに
ドキドキしている。

これは、恋なのか?


いや、そんなはずはない。
臨也の事は大嫌いで、憎くて、殺したくてたまらなかった。



________昨日の放課後までは。




今は臨也の仕草ひとつひとつにどうしても意識してしまい、ドキドキする。

何なんだ、この気持ちは。


信号が赤になり、立ち止まる。
多数の車が目の前を過ぎ去っていく。
周りは動いているのになんだか俺と臨也のところだけ時が止まったみたいに静かだ。
その雰囲気が俺をひどく息苦しくさせる。




_____待てよ。



よく考えろ、さっきまでドキドキしていたが……。
何で肩と肩がぶつかる度にあんな俯いて顔を赤く染めるんだ。


俺は、覚悟を決めて臨也に質問を投げかけた。


「なぁ…、昨日の放課後…」


そう言った時、臨也の方が大きく揺れた。
顔を茹蛸(ゆでだこ)みたいに真っ赤にさせ、ガチガチに固まっている。
あの冷静に俺の神経を逆撫でする臨也とはまるで別人だった。

それと同時に、気付いた。



______やっぱり、起きていたのか。












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