2.はぐれない方法







「本当に人がいっぱいだね! わくわくする!」



上機嫌に、ニコニコする臨也を見て俺は眉間に皺を寄せた。
仮にも恋人の前で、他の奴を見て喜ぶとはどういう事だ。あまり良い気のするものでもない。


だが、目を輝かせあちこちに目移りしてはしゃいでいる臨也を見たら、俺は何も言えなくなる。その理由が、俺の事じゃなくても中々見ない機嫌の良さだ。水を差さないでおこう。




____悔しいけどな。




そんな事を考えている内に
どんどん人混みに押されていく。慌てて周りを見渡すと、やはりと言うべきか臨也の姿が無かった。


さっきは、花火を見て若干テンションも上がったがあいつとはぐれてしまっては何の意味もない。暫く近くを見てキリがないと諦め、電話を掛けようと携帯を取り出したその時。



「シズちゃん!」



浴衣の袖を思いっ切り引っ張られた。驚いて振り返ると、息を荒げて袖に必死にしがみついている。



「……っはぁ、もう…何なのこの人混み……」



うんざりした表情で呟く臨也。お前人間は好きなのに人混みは嫌なのかよ。
道のど真ん中にいるのめどうかと思うので少し横に寄ると臨也が肩に寄りかかって深呼吸をした。



「もう……どっか行ったかと思った」



そう言って、袖を掴み続ける臨也の姿は、何というかやっぱり可愛い。



「…じゃあこうするか」



そう言って臨也の手を取り、ギュッと握った。
途端、顔を赤くし慌てだした。



「……!? な、何してるのシズちゃん!?」



手を離そうとする臨也。
何かその態度少し傷付くんだがまぁ、人の前のせいだと思う事にした。



「またはぐれたら、どうするんだ」



そう言って、すたすたと進む。さっきから視界に映っている林檎飴が気になって仕方がなかったんだ。暫く黙っていた臨也だが突然、



「仕方ないねぇ」



何て溜め息混じりで呟いて思いっ切り手を握り締め返してきた。

別に痛くともなんとも無いんだが、
腹立つ行動に苛立ちつつも耳まで赤らめている横顔を見れば照れ隠しなのか、
と少し嬉しくなってしまったのは口に出さないでおこう。













※夏祭りお題二つ目です。1と続いておりますっ




Top Main







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -