レモンあめ(ファーストキスの味)





「ファーストキスって、どんな味なんだろうね」


臨也はキーボードを打つ手を止め、唐突に呟いてみた。
波江に気持ち悪い物を見るような目で、


「貴方ってそんなロマンチストだったの」


とか冷たく言われ苦笑してしまう。


「そうだねぇ、俺は意外にロマンチストかも知れないな」




そう言い、俺の記憶は数年前に遡る______。











高校時代、俺は屋上とか使われていない空き教室で昼寝ばかりしていた。
また、静雄との追いかけっこが、授業中まで続いた事が度々あったりもした。


だから、よく授業をサボってた。別にだからってテストの点数が悪い訳では無いし。


その日も、屋上に出て風に当たりながらうとうとしていたんだ。


すると、ドアの開く音がした。
シズちゃんかなと思い振り向くとやっぱり俺の予想通り、そこにはシズちゃんが立っていた。


すごく眠たそうにして、あくびをしている。


辺りを見回してこっちに気付いたようだ、だけど今は眠気の方が勝っているから何も言わず近づいてきた。



「……ん?」



シズちゃんの口が、もごもご動いている。飴かな。


俺と少し距離をあけて座ったシズちゃん。
……こんな平和な雰囲気、初めてなんだけど。


なんか、調子狂うなぁと思いつつ何気なしに呟いた。






「シズちゃん、飴食べてるの?」






この一言が失敗だったんだ。



「あ? あー、うん」



そう、適当に返事するシズちゃん。俺は、言葉を続けた。



「俺のは、無いの?」



すると、ボーっとこっちを見ていたシズちゃんの顔が近づいて、近づいて_______。



「えっ、ちょっ…シズ……!?」












君との距離は、0になった。




何が何だか分からない。
混乱して何も考えれない、ただ唇に全神経が集中して。
体中が熱くなるのを感じる。




ころん、と口の中に何かが転がって離れた唇。




「な……っ、何するんだよシズちゃん!?」


「うるせぇ、眠たいから喋んな」


おかしな事をして、理不尽な事を言う目の前の男。
何こいつ、シズちゃんにとってキスなんて照れもしない行為なのか?
顔と体が熱くなって、いつもみたいな饒舌が回らなくて、どうしたら良いか分からなくなる。ある意味泣きたいよ。




「〜〜〜〜〜〜っ死ね!! シズちゃんなんか死んじゃえ!」



そう言って、俺は屋上から猛ダッシュで立ち去った。








この胸の鼓動は、絶対にシズちゃんにドキドキしている訳じゃないんだ!
初めてのキスが、まさかあんな奴とだなんて____っ。

先程の事を思い出し、更に顔が赤くなっているのが自分でも分かる。

口の中に入っている飴。
レモンの味がする。







嬉しくなんか、ない。












「………………………」


いらない事を思い出してしまった。


「あら、顔が赤いわよ。もしかしてファーストキスの事思い出したのかしら」


書類を纏めながら、言う彼女に慌てて、



「ち、違う違う! な訳無いだろ!?」


と必死に弁解するが
その顔では、説得力はまるで無かった。


















※赤面臨也、可愛いです…っ!


お粗末さまでしたっ


Title Tears of...様






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