貰い物




「こら臨也ぁああああぁああああ!待てやぁあ!!」



「待てって言われて待つバカはいないって何回言えば分かるかなぁ?あっごめんシズちゃんはバカだったよね」



標識を投げ、かわす。


そんな事が何度も続いている。
池袋で起こっている喧嘩、いや殺し合い。


通行人は軽く見るだけであって関わりたくないのか
すぐさま空気のように扱い、通り過ぎていく。


臨也がからかい、静雄がそれを真に受け止める。


そうして今日も彼らにとっての日常が繰り返される。


と思っていたが、





「………ッ」




臨也は、転んでしまった。


いつも通り、路地裏に逃げ込み暗闇の中に溶け込みながら
静雄の目の前から消えようとしていたが、油断してしまった。


下に転がっていた空き缶に気付かなかった。


いつもなら、そんな空き缶もすぐに気付いていたはずだが、
しばらく寝ずに、徹夜で仕事をしていたせいだ。


この事には、静雄も驚き足を止めた。そしてまじまじと臨也を見つめる。




「……何、その目」



腹立たしげに呟いてみれば、



「お前って……意外にドジなのか?」




なんて予想外の言葉が返ってくる。




「はぁっ!? 何言ってんのシズちゃん、やっぱりバカだよバカバカバーカ」



転んだのを、敵に見られるのが恥ずかしいのか
臨也の頬はいつもよりほんの少し赤みを帯びていた。


「んだとてめぇ……」


血管が浮き出る、怒ってさえいなければ端正な顔。曲がる標識。


だが静雄は深呼吸をして苛立たしさを一生懸命静めた。


憎い相手のこんな間抜けな姿を見れるのはもう無いかも知れない、そう思いこの瞬間を脳裏に刻む事にした。


「くそ…っ、……いたっ」


立ち上がろうとして、痛みに顔を歪める。

普段は中々こんな怪我では口にも顔にも出さないがこの時に限って、
何故か口から出てしまった。


静雄が真剣に見つめるのに気付いた臨也は、
声のトーンを最大限に落とし、低く鋭く言い放つ。


「見ないでくんない? もう俺帰るから」


そう言い、立ち去る臨也。


ごそごそとベストのポケットを探る静雄。
そして何かを見つけたのか、臨也に向かって声を上げる。



「臨也!」



臨也は振り返らず何、とだけ短く呟やく。一刻も早くここから立ち去りたい。
無視しておけば良かった、と少し後悔の気持ちが現れたが無視した所で

今度は腕を掴まれるかも知れない。
力加減を誤って折ってしまうかも、そう思うと仕方ない選択だ。



「これ」



振り返ると、静雄の手に置かれていた一枚の薄い布みたいなもの。






「………」





絆創膏だ。



まさか、自分の殺したい奴にこんな物を差し出されるとは思いもしなくてパニックになる。



どうゆう、こと?

静雄はただトムさんに何となく貰った絆創膏をベストのポケットに入れていたのを
思い出しただけで、他意は無い。だけどその事を知らない臨也にとっては混乱ばかりを招く。

シズちゃんが、俺に絆創膏なんて物を渡すなんて。




「いらないのか」



受け取らないからか、少し苛立たしさを帯びた声色。



「あ…、いや。うん、ありが、と……」


しどろもどろになりながらも、
静雄の手のひらに置かれている絆創膏を取る。


「気付けろよ」


そう言って、
見間違いかも知れないが。
ほんの一瞬だけ、





静雄が笑っているように見えた。




踵を返し、元来た道を戻っていく静雄。



そんな姿を見つめながら臨也は呆然と立っていた。



よく分からない事が多すぎる。



…というか普通、目の前であんな座り込んでいたら、
それこそ殺せるチャンスだっただろ。


何で、殺さなかったんだ。何で、絆創膏なんか____。


ギュッと拳を握りしめ、
自分を殴り殺したくなる。








さっき、俺は。
確かに静雄にときめきを感じたからだ。



とくん、とくんと少し加速した心臓。それは走ったせいではない、紛れもなくドキドキしていたんだ。



「………な訳ないよね」


そう言い、臨也も新宿へと戻る。



静雄から貰ったものを大事に持ちながら。




















※ちょっとドギマギというか、微かに意識させるような出来事が
あったら良いなぁと思い書いた文章です。


処女作。文章力無さ過ぎです。


お粗末様でしたっ





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