「ならん!」


堂々巡りを始めて既に数分、不貞腐れたような表情でもなんだかんだで整った顔立ちは崩れない。羨ましいったらありゃしないなーなんて考える脳内はかなりぼんやりしていた。


「いつまで待たせる気だ、早くしてくれ」
「だーからさぁ、今日はできない、無理」
「オレがこんなに誘惑しているのにその気にならんとは!」
「それくらい疲れてるんだって」


むすーっと頬を膨らませて女の子のようにいじける彼。部屋にふんわり漂う石けんだかシャンプーだかのいい匂いとも合わさって、睡魔は容赦なくわたしを襲う。


「そもそもなんでわたしが上なの」
「うむ、お前を下から眺めるのも悪くないかと思ってな!」
「あー首痛い」
「最後まで聞け!」


首に回された手がいい加減重たくって軽く捻ればコキコキと音がなった。まぁ、普段と上下逆になるのはいい刺激ではあるだろうけど、やっぱり今はどう頑張っても一回もできそうにない。さて、対してヤル気満々のこの男をどうしてくれよう。うまく躱せればいいけど。


「尽八」
「ならん」
「まだ何も言ってない」
「どうせ早く手を離して部屋に帰らせろとでも言うのだろう。ならん、ならんよそれは」
「尽八、」
「!」


小さな両頬に触れて口をあてがうと、待ちくたびれたように頭を抑えられて彼の方から舌を絡ませた。つけたままだったカチューシャを外して手入れの行き届いた髪を二、三度撫でれば満足そうに体の力を抜く尽八。


「……よし、おやすみ」
「な、ちょっと待て泰葉!何処へ行く!!」
「部屋戻って寝る」
「ここまでしておいてか!?」
「…じゃあ、おやすみのキスだったってことで」
「それ今考えただろう…」


体が彼の手から解放された隙をみてベッドから離れると、慌てて追いかけて来るその姿はまるでペットのよう。眠い目を擦りながら手を振ると、手首を掴まれてベッドに逆戻り。背中に尽八の体温を感じる。


「悪いが帰す気はないのでな」
「悪いと思ってないくせにい」
「はっはっは、まぁな!」


おでこにキスをして後ろから体を弄る彼に仕方なく身を預け、目を閉じた。ああでも、拒みはしないあたりわたしも満更でもないんだな、と笑えてきたところで、所々熱を持ち始めたことに気付き、わたしは意識を手離した。





東堂さんに駄々をこねられてならん!と言われたかっただけのオチのないお話。


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