肩に乗せられた頭が微妙に重く、尚且つうざったい昼休み。


「あー…がぜひいだ……」


耳元で鼻をすする音がして、頼むから制服には垂らさないでくれよと思いながら友人たちからのLINEに既読をつけて返信していく。


「泰葉ー、俺風邪ひいた…」
「うん」
「………」
「……」
「…ちょっとは心配しろよバカあ!!」


そう思うなら離れればいいのに、うー、と唸りながらもわたしに抱きついて離れない彼。光太郎は体調が悪いといつもより面倒になるのか、覚えておこう。ああクラスの子たちみんな笑いながらみてるなー、わたしって彼女っていうよりお母さんにみえてるんだろうなー、なんて考えながら通知の鳴り止まない携帯の画面をみていた。


「光太郎」
「なんだよ、今さら心配したって遅「重い。あと文字打ちづらい」…バーカバーカバーカ!!」
「うわぁ、うるさい」


素っ気なく返すたびに回された腕がぎゅっと体を締め付けて少し苦しくて。仕方なく光太郎の背中をさすってご機嫌を伺えば、腕の力が若干緩んで、さっきまで重かった肩が急に軽くなった。かと思えば。


「……何してんの」
「泰葉はもうちょい俺をかまうべきだと「何してんの」ちゅーした」


それが何か?とでも言いたそうな顔で、さらっとそう述べる。目一杯のため息を吐くと、それがみえていないかのように無遠慮に人差し指がわたしの唇をなぞった。


「泰葉の口ふにふにだなー」
「そりゃどうも」
「もっかい!」


そう言って近付いてきた唇を手のひらでガードすると、不機嫌そうに眉をひそめた。いやいやだって、ねえ?ここ真昼間の教室ですからね。それについさっき風邪ひいたって自分で言ってたくせに。


「今日の泰葉はいつもよりいじわるだ…」
「いつも意地悪みたいに言うんじゃないよ」
「じゃあ手どけてくれよ」
「やだよ、うつっちゃうもん」


眉間のしわがより深くなっていって、無理やり手を退けようとするから慌ててフォローをいれる。


「ねえ、風邪が治ったら、我慢した分好きなだけすればいいでしょ」


ね、と微笑みかければ、ぱちくり瞬きをさせて、にっと笑ってわたしのおでこに口付けた。ああよかった、つくづくお手軽。


「泰葉もしてくれよー」
「えー」


屈んで顔の前に差し出された額に仕方なくキスをすると、嬉しそうに笑った。全開で好きを表に出してくるから、気恥ずかしくなってわたしは上手く表現できないけど。それでもやっぱり、わたしのキス一つでこんなに顔を緩ませる姿をみて、好きだと思わずにはいられなかった。馬鹿につける薬はないと言うけれど、それってこういうことなのかもしれない。




「…くっそ、昼間っからいちゃつきやがって」
「木葉さん、話しかけるタイミング逃したからって僻みはちょっと」
「違いますう全然違いますけどー。つうか哀れむな赤葦、俺がマジでかわいそうなやつみたいだろ」
「木兎さん忙しいみたいなんで、また後にしましょう」


一応、アニメ再開記念です。


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