夏は、天敵。
「あちー…汗やば…」
伝った汗は拭っても拭いきれないほどで、やかましく鳴り響く蝉の合唱と、孝支の部屋の湿気というダブルパンチがわたしを今日も悩ませる。
「…孝支は全然暑そうじゃないねえ」
何故かそっぽを向いていた孝支は、汗こそかいているもののなんとも涼しげで、ああ羨ましいな、わたしも生まれ変わったらこういう体質になりたいな、なんてぼんやり考えていた。
「泰葉、顔真っ赤」
唐突に頬に触れた指先。触れられたことで初めて自分の頬が熱を持っていることに気付いて、薄ら笑いを浮かべる。
「あー、うん、なんか昔から暑いとこうなるの。子供みたいで恥ずかしいんだよねー」
あはは、と頬杖をつこうとした腕は孝支に引かれて空振り、崩れたバランスを支えるように唇同士が触れ合った。至近距離で目と目が合い、息がぶつかる感覚。思わず後ずさって、距離をつくる。
「…び、っくりしたー…えっと、何、どうかしたの」
未だ掴まれたままの腕に目線を落として、どくどくと血が流れる音を聞いた。心臓が、呼吸が早まる。気温と別の、体の内から滲み出るような熱。
「……したい」
「…え、何を」
顔を上げてそう問うた途端、こつん、とおでこ同士がくっついて、少しふてくされたような顔の孝支が呟く。
「…そんな恥ずかしいこと、俺言えないって」
わたしの熱でも移ったかのように、赤い林檎みたいな頬をした彼が微笑んで、また唇が重なった。
(続きはR18です。)