「ハッピーバースデー」
波のない彼女の声と共に、煙のにおいと紙吹雪が降ってきた。
無敵のポーカーフェース
「……え」
俺の反応を無視して、地面に散らばった紙吹雪とクラッカーをコンビニの袋にいれていく彼女。髪に触れられてやっと我に返り、その手を掴んだ。
「何事!?」
「髪に紙吹雪の紙が」
「そうじゃなくて、なんでクラッカー…?」
「山口が誕生日だから」
でしょ?と無表情で俺を見つめる彼女は、相変わらず何を考えているのか読めない不思議な子。
「そう、だけど…え、それでなんでクラッカーなのかな」
「欲しいものがわからなかったから、とりあえずお祝いの雰囲気をと思って」
「気遣ってくれなくていいのに…でも、ありがとう」
一応彼女なりに考えてくれていたことに胸があったかい気持ちになると、屈むように促されて言われるがまま目線を彼女に合わせた。
「来年はちゃんと用意するから、今年はこれで許して」
ちゅ、と小さくほっぺたにキスされて、してやったりな顔をされて。
「誕生日おめでとう、山口」
そうやって微笑んだりするから、やっぱり佐和さんには到底敵わなかった。
「照れてる?顔、赤い」
「…おかえし」
「………」
「…え」
「…こっち、見ないで」
赤く染まった君のその頬で、また俺の体温が上がる。
Happy birthday dear Tadashi Yamaguchi!
2014.11.10