すっかり日の落ちる時間が早くなった。
「…ってことがあってさ、そしたらツッキーが」
「山口って、結構デカイよね」
見上げて話を聞いていると、首が痛い。なかなか終わらない彼の話の途中に呟くと、驚いたような嬉しそうな、恥ずかしそうな顔をした。
「え、そっそう?そうかな?」
「うん、意外と。今何センチ?」
「百八十ないくらい…かな」
「デカ…普段月島の隣にいるから小さく見えるのかもね」
「あー、よく言われるよ」
山口は、月島に友愛を抱いているのに、わたしが月島の話をすると微妙な反応をする。別にいいけど、前からちょっとひっかかる。
「あのさ、今さらなんだけど」
「うん」
「…本当に、俺でいいのかな」
振り向くと、階段の段差のせいでわたしたちはほとんど同じ目線になった。少し悲しそうな目に夕焼けが映って綺麗で、でもそれに途轍もない不快感を覚える。
「…何それ」
「俺、全然かっこよくないし…正直不安、だよ」
制服の裾を握り締めたその手を引いて、自分の唇を山口のに押し付けると、時が止まったみたいな感覚。どきどきと鳴る胸の音を抑えて、瞬きが増える彼を見つめた。
「わたしは、山口がいい」
振り絞った言葉は恥ずかしすぎて、どうしてか涙が出そうだった。一瞬もしも、を考えた。山口以外の誰かとって、そんなのありえない。どこがいいとか悪いとかそういうことじゃなくて、ああそうか、わたしは。
「…山口じゃないと、多分駄目なんだと思う」
掴んだままだった手を離すと、今度は山口がわたしの腕を引いた。ぎゅっと目を閉じた山口の顔が目の前に来て、また唇が触れ合った。
「泰葉ちゃん、かっこ悪いこと言ってごめん…俺もっと頑張るから、だから…」
「…だから?」
「こ、これからも俺の彼女でいてくれますか…?」
女の子みたいに赤くした頬に、強張った顔が緩んだ。
「…お願いします」
夕焼けに照らされてくしゃっと笑った山口を、かっこ悪いだなんて微塵も思わなかった。恐る恐る伸びた手がわたしを抱き締めて、どちらからともなく三度目のキスをした。
少し弱気な君の話
(思いの外、君に惚れてるわたしの話)