新発売のシェイクを飲みながら京治を待った。うん、なかなかおいしい。秋は栗とかさつまいも味の期間限定品が増えて目移りしちゃう。
「お待たせ」
「んー。何にしたの?」
「シェイク。バニラの」
学生さんはお金がない。だからファーストフードで安いものを頼んでだらだら喋るだけのデートが一番お金がかからない。…にしても。
「いつもバニラ…飽きない?」
「別に」
「ふぬう」
「なんだそれ」
思わぬ即答に特に意味もない言葉が漏れると、彼は少し愉快そうに口角をあげた。いつも笑ってればいいのになぁ。
「泰葉は…いつも違うな」
「新発売とか期間限定に弱いから」
「チャレンジャーでいいな」
「結構ハズレもあるけどね」
でも今日のはアタリ、と続けるとそれじゃあ一口と言ってわたしの手から紙カップを奪った。
「あ、ちょっと」
「…ん、確かに。俺のもいる?」
「…いる」
ああ、なんだろう。ただの間接キスといえばそうだろうけど。キスなら何回もしただろうと言われればそうだろうけども。
「(めちゃくちゃ恥ずかしい…なんでこう、さらっとそういうことをするのかな京治は)」
「でもいつもの方がいいな、やっぱり。…泰葉、ちょっと飲み過ぎ」
「……あっなくなったごめん」
「…俺まだ全然飲んでない」
「ごめんごめん、買ってくる。同じのでいい?」
「うん」
ぼーっとしていたせいで京治のシェイクを飲み干してしまった。いけないいけない。鞄から財布だけをとってレジに走った。
「…はあ」
間接キス、とか。ちょっとは反応あるかと思ったけど微妙だな。…寧ろ。
「(俺の方が余裕、ない)」
仕掛けておきながら、逆にまんまと引っかかってしまった自分に再度ため息をついた。