うーん、困ったね。実に困った。
わたしの手元にはセクシーなお姉さんが表紙を飾る、そういう本が数冊。光太郎の部屋で、光太郎がトイレに行ってる今偶然見つけてしまった。

さてどうしようか。見てみぬふり?怒る?うーんでも仮にも思春期だし人間の本能だから責めるのはちょっと違うと思うんだよなぁ。というか、この本の子みたいにおっぱいおっきい子がいいのかなやっぱり。


「…これじゃあね」


あまりない自身の膨らみにため息をつくと、部屋のドアが開いた。


「おかえり」
「おーただい…んが!?!」
「あ、ごめん見つけちゃった」


とりあえず本を差し出すと、光太郎は素早くそれを受け取って背中に隠した。
いや今さら隠されてもね。なんなら中身ちょっと見ちゃったしね。


「…お、怒ってるか…怒ってるよなそうだよなごめんでも」
「いや、怒ってはないよ。大丈夫」


もにょもにょと弁解しようとする光太郎にストップしてもらって、怒ってないならなんだと言いたそうな彼になんと言おうか考えた。怒ってはない、けど、なんだろうこのもやもや。うーん…あ、そうか。


「うん、でもちょっと妬いた、かも」


恥ずかしくて情けなくて、光太郎の顔が見れなくて思わず彼の胸に顔をうずめてみたりした。うわぁ言っちゃった、言っちゃった。どうしよう、自分で言っといてなんだけど何言ってるんだろう。ほらもう光太郎も黙っちゃってるしわたしのキャラじゃなかったやめておけばよかった。


「………ご、」
「ご?」
「ゴメン、なさい…」


ばつが悪そうに眉を下げた光太郎に唖然として、わたしは気付けば笑ってた。


「俺もう見、見な…ぐ、ぬう…」
「(見ないって宣言は嘘でもできないんだなぁ)…見るなとは言わないけど、今度からはちゃんと隠してね」
「!  わかった!!」


つんつん頭を撫でれば、彼は安心したようににっと笑った。…まぁもう長い付き合いだし、謝ってくれたし。変にやきもち妬かなくたって、ね。


「泰葉に嫌われたかと思った…」
「おおげさだねぇ」
「…本当の本当に怒ってない、よな…?」


いつもより疑い深い光太郎に、背伸びしてキスすると、驚いたのか例の雑誌を床に落とした。慌てる光太郎に抱きついて、らしくないのはわかっていながらも囁いてみた。


「怒ってないよ。だって光太郎には、
わたししかいないでしょ?」





(僕にも君しかいないということ)











▽速水様

お世話になっております。木兎さん宅でえっちな本を見つける、というリクエストをいただき書いてみましたが、いかがでしたでしょうか。

今回のような思春期カップルネタは憧れでしたので、とても楽しく書けました。なのでお気に召したら良いのですが…。

まだまだ未熟ですが、多少のお手透きのお役に立てていましたらと思います。
この度は誠にありがとうございました。よろしければまた、いつでもどうぞ。

芹沢


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