部活を引退してからというもの、休日はすごく暇なことに気付いた。最初のうちはそれなりにやりたいこともあったような気がするし、やることもあったはずなんだけど、やっぱり何かが足りない虚無感に苛まれた。


「バレー、したいな…」
「もーにーわーさーん!!!!!」


自室で呟いた独り言を掻き消すように外から声が聞こえた。…え、俺?聞き間違い、だよなきっと。だって用があるなら普通インターホン鳴らすだろうし。


「茂庭要さあああん!!!!」
「!?」


名指しされると流石に幻聴じゃないとわかって、窓辺に立つとそこには後輩の佐和の姿があった。俺を見つけると大きく手を振りながら飛び跳ねて、俺は慌てて家を飛び出した。


「佐和、ど、どうした?部活は?」
「終わりましたー!」
「あ、そう…」
「で、今日はこれを渡しに来たんす!」


はい!と言って渡された箱。なんだろうと思いながら開けてみる、と。


「ぬひゃあっ!?!」


可笑しな顔をしたピエロがみょんと飛び出してきて奇声を発すると、佐和は腹を抱えて笑った。


「び、びっくり箱とか…もう、幾つだよ!」
「あーっはっは!茂庭さん、もう、百点満点!ナイスリアクション!最高!!」


俺は後輩にいつまで振り回されれば…大きくため息をつくと、はいと今度はスーパーの袋を渡された。


「遊んじゃってすいません、本命はこっちです。まぁプレゼントにしてはちょっと色気ないっすけど」
「?」


袋の中にはたくさんのお菓子。…と、その中で異彩を放つ小瓶。


「…何故ごはんですよが…」
「茂庭さんの好物だって青根が!」
「うん、好きだけど…そもそもなんでプレゼント?」
「は?……え、まじすか!?」
「何が!?」


信じらんねーと眉を顰めた佐和に理由を問うと、さっきの俺のようにため息をついて彼女は答えた。


「茂庭さん、誕生日でしょ!ハピバでしょ!」
「…あ、そうだそういえば」


なんだかすっかり忘れてた。だからわざわざ…そうか。


「俺頼りない先輩だったのに、わざわざありがとう」
「慣れたんで全然気にしてないっす!」
「あ、そ、そう…」


それはそれでショックだぞ…。ふと、俺を見上げる佐和に気付いて首を傾げた。


「何?」
「…いいえ!来年も佐和サプライズしますからお楽しみに!」
「それ今言ったらサプライズじゃ…って、来年は俺もういないぞ、わかってる?」
「また家に押しかけるんで問題ないっす!…それで、」
「うん?」
「来年は、茂庭さんの彼女になれてたら、いいな…」


小さく呟いたかと思えば、あははと笑ってそれじゃあと背を向けた佐和の腕を咄嗟につかんだ。そんな自分に驚いて、彼女も驚いていた。


「あ、えっと…誕生日!佐和の誕生日は、いつ?」
「…なんでですか」
「まだならこれから祝うし、もう終わっちゃってたら…次の誕生日は、佐和の彼氏でいたい。…と、思うから」


ああ、今日言うつもりなんてなかったのにな…佐和の顔が見れない。そもそもさっきのが冗談とかだったら俺すごい勘違いしてるただの馬鹿だな…。


「…茂庭さん」
「は、はい」
「本気にします、よ」


佐和の顔は、すごく赤かった。


「わ、」
「誕生日、おめでとうございます」
「…あり、がとう」


俺の体に顔を埋めた佐和は掠れるような声でそう言った。佐和は小さくて、なんだかいいにおいがして。…今、顔を見られなくてよかった。


「(…俺多分、すごいスケベな顔してるし)」


宙を泳いだ手で恐る恐る彼女を抱き締めると、初めて触れたのに妙にしっくりきて心地が良くて、このまま離したくないなんて柄にもなく思っていた。





(茂庭さん、好きです)
(俺も、佐和が…好き、です)
(そうだ誕生日、祝ってください!
わたしの誕生日は、)




Happy birthday dear Kaname Moniwa!
2014.09.06


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