ああ暑いな。去年も一昨年もその前も当然暑は夏…じゃなかった、夏は暑かったけれど、今年はさらに輪をかけて暑いと思う。なので、髪を切った。ばっさりと。




「泰葉、髪切ったらなんか研磨と似てんな」


幼馴染のクロ、研磨と屋上に続く階段で昼食をとったあとのんびりしていたとき、クロがそう言った。


「は?」
「なんかこー雰囲気?元々だるそうなとことか似てたけどな」


ふと隣に座る研磨をみた。ゲームに夢中な横顔。確かにわたしは高校生になってから髪を染めたし、染め続けるのが面倒でプリン気味だ。でもわたしは研磨のように不良まっしぐら(不良じゃないけど)の金髪じゃなく暗めの茶髪だし、研磨みたいな猫目じゃない。そりゃあ多少めんどくさがりな気はあるけど、それを言ったらクロだって同じようなものだ。


「…いやぁ似てないでしょ。ねえ研磨」
「うん」
「いやいや似てるだろ」
「ていうか泰葉、なんで急に髪切ったの」
「え、だめだった?」


だめじゃないけど、と続けた研磨の目線は相変わらずゲームの画面に釘付け。うーん、あんまり似合ってなかったかな。自分の髪を掬ってみつめていると、研磨の手が伸びてきてするりとわたしの髪を指に絡めた。


「…うん、やっぱり長い方がいい。伸ばして」
「え、わたし研磨のために髪伸ばすの」
「だめなの」
「じゃあ俺のために伸ばせよ」
「え、クロのために伸ばすのだけは嫌よ」
「わかる」
「お前ら俺に当たり強すぎじゃね」


予鈴が響いて各々立ち上がった。階段をだん飛ばしで降りると、いつもより軽い頭にほんの少し慣れなくて。


(…ま、元の長さになったら寒くなってるか)


短くなった横髪を耳にかけたら、夏のにおいがした気がした。






(いっそあれだ、泰葉も金髪にしろよ)
(なんでそんなに研磨に似せたいんだよ)
(双子みたいになるだろ)
(研磨、クロの言ってること理解できる?)
(全然)


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