いつだってそうだ。昔から、あいつは
なんてことないような顔でテストもかけっこも、なんでも一番を奪ってった。
なのに、わたしはどれだけ追いかけても、あいつの背中には届かなかった。


秒速で動く点Pとの関係




「…47点か」


50点満点の小テストが返され、まずまずといったところの点数にそれなりに満足した。ものの、少し離れた席のあいつはやはり今回も。


「…チッ…」


得意気な顔で自身の点数をわたしにみせたあいつに舌打ちをすると、あいつは益々機嫌が良さそうに嫌味ったらしく笑った。また、負けた。月島は49点。あと少しなのに、どうしていつも勝てないのか。





「泰葉はさぁ、ほどほどって言葉を知った方がいいよ」


放課後、教室で落ち込んでいると、友人はそんなことを言い放った。


「別に、絶対一番になりたいわけじゃないんでしょ?」
「…まぁ、うん」
「じゃあそんな毎日勉強することないじゃーん。たまには遊びに行こうよー」
「うーん、でもテストの点悪かったし」
「嫌味!それ超嫌味!!」


ちょっとだけ残って勉強する、と伝えると、彼女は呆れた顔をして教室をあとにした。仕方ない、今度アイスでも奢ることにしよう。さて、勉強をと教科書を開いたとき、教室のドアが開く音がした。人間というのはそういうのに反応してしまうもので、顔をあげるとそこには宿敵、月島の姿が。


「……」
「……」


とは言っても別に、特に用もないのに話したりはしないけれど。集中集中。そう思っていたのに、急に光が遮られたわたしは、思わず顔をあげた。目の前にはわたしを見下ろす月島が。


「…何か用」
「別に?頑張ってて偉いなぁ、って」


どうせまた僕に負けるのにね、と付け足して笑う月島にカチンときて、気付いたときには立ち上がって自分の頭より高い位置にある月島の肩を思いっきり押した。月島もさすがに予想外だったようで、よろけた月島は何故かわたしのシャツの襟を掴んでーー


「…ご馳走様」


体制を立て直した月島は、
わたしにキスを…キスを、した?


「……え、は…?」
「怒った顔もいいけど、暴力は良くないんじゃないの。じゃ、またね」


ひらひらと手を振って教室から出ていったあいつ。足の力が抜けて椅子に座り込んだ。
何が、何が起きた?…嘘だ、嘘だこれは夢だだってそんな、ありえない。違う、一番ありえないのは、


「…なんでわたし、顔こんな熱いの…」


そんなわたしだ。




(いつだってそうだ、奪って行くくせに)
(どうしておいていくの)


続編:鬼さんこちら、さぁ「…」