喧嘩するほど仲がいいって、昔偉い人も
言っただろう。


「泰葉危ない!!」
「んお?…ぶっ!」




「見事に顔面にヒットしたのねぇ」
「ごめんね泰葉っ…!」
「大丈夫だよー、びっくりしたけど」


体育中、飛んできたテニスボールを顔面で受けてしまったわたしは大丈夫と言ったのだけれど、保健室に連行されてしまった。たらりと流れ出た鼻血を今しがた先生にティッシュで止められたところ。ボールを打った友人を宥めると、保健室のドアが開いた。


「すいません、ちょっとティッシュを…」
「影山くんも鼻血?今日は多いわねぇ。
ほら入ってそこ座って」


入ってきたのは同じクラスの影山だった。なんとわたしと同じ用事で。


「よ、影山」
「おう」
「まさか二人揃って鼻血とはね」
「お前はどうせ転んだとか馬鹿みたいな理由だろ」
「ぶち殺すぞ」
「やめなさい二人とも」
「「スイマセン」」


先生の笑顔が怖いから大人しく座っていよう。影山もそう思ったのか黙って手当されている。


「影山くんもだけど、とくに佐和さんは女の子なんだし気をつけてね。鼻は骨折しやすいし」
「鼻も折れるんスか?」
「そりゃあ骨あるんだから折れるときは折れるでしょ、影山馬鹿じゃね」


はっはーと笑うと足を踏まれた。ので、背中をつねると互いにガンを飛ばし合う。ぐい、と先生の手がわたしたちを引き離して、今日のところは一時休戦ということで決着がついた。


「…腹減った」
「あ、今日弁当にハンバーグいれた」
「まじか」
「影山の特大だから楽しみにしてて」
「おう」


あー、そろそろ血止まったかな。顔をあげると、友人と先生がわたしと影山をガン見していた。え、何がどうした。


「…泰葉と影山って、仲悪いんじゃないの?」
「まぁ、よくはないわなぁ」

「じゃあどうして佐和さんが影山くんのお弁当を?」
「どうしてって…付き合ってるんで、俺たち」


しばしの沈黙のあと、友人の叫び声に似た驚きの声が保健室に響き渡った。




(よく驚かれるよね、わたしら)
(毎日教室でキスでもするか)
(影山…頭いい)


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