短編 | ナノ


02

子供には悪いが、あの程度の手当てと食事で俺が助かる見込みは無かった。

ゆっくりと死んで行く。

俺は願った。

幸い此処は狐憑きの神社だ。

『この神社に巣くう妖孤に勝ったなら、俺にあの子供をください。』

誰も答えない。

『現妖孤より、いい妖孤になってみせます。山の手入れもして、ふもとの村も豊作にして…』

何でもする。人間に虐められ死のうとも、人間を憎まず、恨まず…

何十回も何百回も願う。

暫くして体に力が宿った。

俺は、立って走って走って、山の中を捜した。妖孤を。

そして殺した。

奴はもともと悪い妖狐で、山を荒らしていたから、神様が俺に味方したのだ。

俺は妖孤の力を手に入れて、毎日山の世話をし、ふもとの田畑に恵みを与えた。

あの子供が手に入る時を思って。


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手当てしてくれた時に貰ったハンカチは、食べてしまった。

あの子の物ならなんでも欲しい。食べたい。

食べる前に、ハンカチについてあった名札で、あの子の名前は覚えた。

それから、村の子供達が、年に一度、夏に遊びに来るとも教えてくれた。

あれから何年か経ってしまったが、今年こそは会いに行こう。

さっそく、肝試しの日に、子供達に紛れた将を見つけた。

黒い髪に黒い眼。変わってない。肌は日に焼けて、少し黒くなったけど。

肝試しはペアで行くそうだ。俺は絶対、将とペアを組もうと思ったのに、将は女の子と行くようだった。

嬉しそうに照れていて…。

「晶子よかったわね、将くんのこと好きだって言ってたし」

「今日告白するのかな?」

周りの子供がヒソヒソ話していた。


許せない…。

俺の将なのに。

だから力を使って晶子を騙し、脅かしてやろうと決めた。

「俺、君とペアだヨ」

「え?晶子じゃなかったっけ?」

「晶子はやっぱり女の子同士で行くっテ」

笑顔で嘘をついた。

「そ、うなんだ。…わかった!頑張ろうな!ぁ…お前名前は?」

「右京だよ、初めてきたから…よろしくネ」

将は笑って、「俺、将!よろしくな!」と言ってきた。

あぁ本当に将は可愛い。

俺の将。

嬉しすぎて、はしゃいで転んでしまった俺を優しくおぶってくれ、あの時みたいにハンカチで傷の手当てをしてくれる。優しい大好きな人間。

もっと一緒にいたくて3日間だけ、ずっと一緒に過ごした。

いろんな遊びをしたし、いろんなものを捕まえて、お腹がすけば山のものを食した。野苺や、キノコ。

でも、将は途中から帰りたいと泣きだした。
だから、仕方なく家へ帰した。

前に神社で見た、将を連れて行った男が、また将を抱いて家の中へ入って行った。

悔しい…。

俺の将なのに。


「いつか絶対に迎えに行くからネ」


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