「源田!これ見て!」


そう言って彼女、みょうじなまえが俺に突き出したのはペンギンのぬいぐるみ。デフォルメ調のそれは可愛らしくなまえの手のひらに収まっていて、ぬいぐるみから彼女へ視線を移すとキラキラした瞳で此方を見つめていた。


「いいでしょ!可愛いでしょ!佐久間にもらったの!」


彼女は女の子らしいというか何というか、とにかく可愛らしいものが好きだそうだ。うっとりした表情で手のひらの上のぬいぐるみへと視線を移す彼女はそのぬいぐるみに負けないほど可愛らしい、が、他の男に貰ったものに対して注ぐその視線は気に入らなかった。そこであえて俺はそっけない態度を取ってみることにする。


「そうか、よかったな」
「うん!だからこのお返しにバレンタインにチョコあげる約束したんだ!」
「(佐久間…お前…)」


そこまでしてなまえのチョコが欲しかったのか。いや、なまえのチョコを貰うのは俺一人で十分だ!義理チョコなんていうものを作る暇があったら本命チョコに全精力を注ぎ込んで欲しい。


「なまえ、それは認められない」
「え?認めるって?」
「佐久間にチョコをやるなと言ってるんだ」
「…なんで」


きょとんとするなまえに思わず溜息を吐きそうになるもののなんとか堪え、俺は引っ手繰るようになまえの手のひらからペンギンのぬいぐるみを奪い取った。


「あーっ、ペン太!」
「何がペン太だ!大体俺以外の男にチョコをやるだなんてそんな……あ」
「…源田そんなこと気にしてたの?」


口が滑った。そう思っているうちになまえはペンギンのぬいぐるみ(ペン太だったか?)を俺から奪い返してにっこり笑う。その笑顔がまた可愛いだとか思う辺り、俺はなまえに何処までも惚れ込んでしまっているんだろう。


「大丈夫、佐久間には市販のちっちゃなチョコ1粒あげるだけだから!源田にはちゃんと手作りだから、バレンタイン楽しみにしててね」
「あ、ああ…そう、か」


やばい、柄にもなくにやけてしまいそうだ。嬉しさのあまり緩む口元を片手で押さえながら顔を背けた。ああ、今からバレンタインデーが楽しみだ!


(この時は知らなかった、なまえがとてつもなく料理下手だと言うことを)




葉嫩様(源田幸次郎or綱海条介/ほのぼの)



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