「あんた、自分が今まで何してたかちゃんと覚えてるの?」


むっとした表情で私は告げた。目の前の男、緑川リュウジと名乗る彼は飄々とした様子でこくっと一度頷く。その様子が更に私を苛立たせた。


「学校壊されたみんながどれだけ悲しかったか分かってるんでしょうね!」
「あはは…もう本当に申し訳ない!」
「申し訳ないって、それだけで済まされるような問題じゃ…っ」
「まあまあ!みょうじ、緑川は今日から俺たちの仲間だ。昔のことは忘れようぜ」
「え、円堂くん…!」


不意に私と緑川くんの前に入ってきたのは円堂守、我らがキャプテンだった。にこにこと笑顔を浮かべる彼に私は何とも言えない気持ちになる。


「円堂くんはいいの?私たちの学校めちゃくちゃにされたのに!」
「んー、いいわけじゃないけど…ほら、あれ何て言うんだっけ、緑川」
「『昨日の敵は今日の友』ってやつ?」
「あ、それそれ!つまりそういうことだよ、みょうじ」
「円堂くん、それ緑川くんに上手く翻弄されてるだけだよ!」
「え、そうなのか?緑川」
「そんなわけないって!話振られたから、多分こういうことが言いたいんだろうなーっていうのを僕が予想しただけ!」


なんだか信じきれなくて不信感を抱きながら緑川くんをじーっと睨みつけると彼は目を逸らしながら「本当だってば」と呟いた。いや、信じがたい…。


「なんだよみょうじ、緑川のことずっと見つめて」
「へ?い、いや、見つめてなんか、」
「どうせならもっと熱い視線がいいなあ」
「…黙れ緑川」
「じっ、冗談だよ!…ふう、怖い怖い…」


もう一度じろっと睨みつけると彼は頬を引き攣らせながら溜息を吐いた。私はどうにも彼を好きになれないらしい。そう思いながら目を逸らすと不意に視界に入ったのは円堂くんの清々しい笑顔。その笑顔の意図が掴めず思わず目を丸くした。


「二人とも仲いいんだな!例え今までのことがあったとしても…えっと、あれなんて言うんだっけ…」
「『終わりよければ全て良し』?」
「そうそう、それだ!」
「何も良くないよ!学校壊されたっていう事実は変わってないじゃん!」
「でも直ったよね?」
「そうだな、もう新しい校舎もちゃんと建ってるし、完璧だ!」
「そういう問題じゃない!」


にっこりと笑いあう緑川くんと円堂くん。二人の中では上手く纏まってるのかもしれないけど…何もよくない。何が解決したっていうんだ。やっぱり私はどうにも緑川リュウジという男の子を好きになれそうにない。そういう意味を込めて緑川くんへ視線を注いだ。


「あっ、分かったぞ!みょうじ、お前緑川のことが気になって仕方がないんだな」
「…は?」
「なんだよー、最初からそう言えばいいのに!」
「え、そうなの?あははっ、嬉しいなー。じゃあこれからは敵としてじゃなく同じ仲間としてよろしくね、みょうじさん!」


そう言って笑う緑川くんと嬉しそうに笑う円堂くん。いやいや待て、何がどうなればそういうことになるんだ?うん?そう思いながら呆然とする私の腕を円堂くんが無理矢理掴んで気付けば緑川くんの手と強制的に握手させられる。いやあ参ったなあ、と照れたように頬を掻く緑川くん。なんだこの状況は。どうしてこんなに会話が噛みあってないわけ?
ああわかった、なるほどそういうわけか。つまり緑川くんと円堂くんは二人とも物凄い天然で、天然が二人揃ったから私もペースを乱されてるってわけ。うんうんなるほど。
って、納得できるか!!



緋煕様へ(円堂守と緑川リュウジ/ギャグorほのぼの)



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