「すごい雨だね、風丸」
「そうだな」


俺の隣で憂鬱そうな表情を浮かべ溜息を吐いたのはみょうじなまえ。サッカー雑誌のページを捲りながら相槌を打った俺は風丸一郎太。俺たちは今なまえの部屋でぼんやりと時間を過ごしていた。本来なら、出掛ける予定だったんだが。


「折角風丸とデートの予定だったのに、こんな雨じゃ何処にも行けないじゃん」
「こんな天気の中出て行ったら確実にびしょ濡れになるな」
「それは困る」


でも行きたかったなあ。そう残念そうに言う彼女をちらりと見ると俺は雑誌を閉じて机の上に置いた。窓際からじっと空を睨みつけているなまえがなんだかおかしくて笑みを零すとその視線が俺へと向けられる。


「なんで笑うの!」
「いや、なまえがあまりにも酷い顔をしていたからな」
「酷い!」
「じゃあそんな膨れっ面するなよ」


片手を伸ばしてなまえの頬に触れる。すると次第にその表情が崩れていってはにかむような笑みを浮かべた。その手に重なるなまえの小さな手はずっと窓際にいたからか少し冷たい。


「俺はこうしてなまえとのんびり過ごすのも悪くないと思うぜ」
「退屈だなあとか思わない?」
「少なくとも俺はなまえが居れば退屈しない」
「…そっか、それならよかった」
「なまえは退屈なのか?」


そう問えばゆっくり顔を横に振るなまえ。彼女と同じように「ならいいんだ」とだけ返すと俺は彼女の額にそっと口付ける。擽ったそうに身を捩るなまえに思わず頬が緩みつつ、なまえの顔を覗き込んだ。


「たまにはいいな、雨の日ってのも」
「風丸が一緒に居てくれるなら…悪くない、かな」


出掛けられないのは残念だけどね。そう言って笑うなまえに釣られて俺も笑い声を零す。頬に触れていた手の親指で彼女の唇を軽くなぞった。


「なまえ、キスしていいか?」
「そういうのは聞かなくていいんだよ」


なまえが照れ臭そうに言うのを聞いてから、俺はその唇から手を離す。両手で彼女の頬を包み込むと次第に縮まる俺となまえの距離。窓に打ち付ける雨の音がやけに大きくなるのを聞きながら、俺はなまえの唇に触れるだけのキスをした。



由弥様へ(風丸一郎太or緑川リュウジ/甘め)



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