「なまえーっ!」
「う、わあ!?まっ、守?」


突然背中から強い衝撃を受けたと思い振り向けばそこには雷門中サッカー部キャプテン兼私の恋人である円堂守がいた。守は背中から抱きついて私のお腹に腕を回している。ちなみに言うと此処は通学路であり、雷門中の生徒も何人かちらちらと此方を見てきているわけで。


「守!ここ通学路!」
「ん?分かってるぞ」
「分かってるなら離れろー!」


私の後ろにいる守の額に手を当ててぐいぐいと押す。「えー」だの「いいだろー」だの駄々を捏ねていた守も諦めたのか腕から力を抜いて私の隣に立った。付き合い始めた時から守は加減というものを知らない。愛情表現はいつでも真っ直ぐだし、それに分かりやすい。幸せといえば幸せだし、こんな悩みは贅沢なんだろうけど…真っ直ぐすぎて、時々私が焦ってしまう。


「だってさ、朝からなまえに逢えるなんて幸せだろ!」
「っ…そ、そういう恥ずかしいことをさらっと言わないの」
「ん?俺は恥ずかしくなんかないぜ!」
「私が恥ずかしいの!」
「…相変わらずなまえは恥ずかしがりやだなー」


ケタケタと隣で笑う守を恨めしげに見てやった。私が恥ずかしがりやなんじゃなくて、守が恥ずかしがらなさすぎるんだ!此処は通学路だから適度に接しようとか、そんなことこれっぽっちも考えてないんだから。そんなことを考えていると「ん」と小さな声が耳に届く。少し視線を落とせば守の手が私に差し伸べられていた。もう一度彼の顔を見上げる。


「ん!」
「…な、なに」
「だから、手!繋いで行こうぜって意味」
「私がさっき言ったこと覚えてる?」
「此処が通学路ってことか?」
「そう!だから繋がない!みんなに見られちゃうでしょ」


守のことは好きだし、真っ直ぐな彼の想いも好きだ。けれど誰かに見られるのはやっぱり恥ずかしいわけで。そう思って呟くと不意にぐいっと私の腕が引かれて、気付けば守の大きな手に私の手は包まれていた。抵抗する前にするりと指が絡められて逃げようにも逃げられない。


「ちょっ、ま、守ってば…!」
「いいんだよ、それで」
「はあ?」
「みんなに見られた方がいいんだって」
「な、なんでよ!」


だから恥ずかしいって言ってるじゃん!そう言えばにっと嬉しそうに明るく笑う守。


「こうすればなまえは俺のモンだってみんなに分かってもらえるだろ?」


その言葉は、そんな素敵な笑顔とセットにしちゃあ、いけないものです。頬に熱が集まって、私に先程までの勢いはなくなった。守と繋いだ手を私からもさり気なく握り返すと彼はぱっと嬉しそうに表情を輝かせる。


「なまえっ、今日も大好きだぜ!」
「…私の方が好きなんだからっ」
「何言ってんだよ、俺の方が好きに決まってるだろ!」
「わ、私だってば!」
「俺だ!」
「私!」
「俺!」


いつしか此処が通学路だなんてことを忘れ、私は守と仲良く手を繋ぎながらどちらの方が相手を好きかという言い合いをして登校することとなった。


「お前ら、仲が良いのはいいことだけどよ…」
「ん?なんだよ、染岡」
「場を弁えろ!このバカップル!」



匿名様(円堂守/バカップル)



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