「鬼道さん!」


大きな声で名前を呼べば振り返る私の大好きな憧れの人。鬼道有人さんは帝国学園サッカー部のキャプテンであり、同時にみんなから慕われ憧れる存在だった。マネージャーである私はタオルを差し出し彼に声を掛ける。


「練習お疲れ様です!」
「ああ」
「この後は必殺技の練習ですか?」
「そうだな。そろそろ基礎練習を切り上げてそっちに移るつもりだ」
「そうですか!じゃあ私、他のみんなに伝えておきますね」


手に持っていたドリンクを鬼道さんに手渡して、にっこり笑いかけた。


「それにしてもこの間の学校、派手にやっちゃいましたねー。すごかったです」
「そうか?今までと変わらないようだったが」
「だってあの学校、それなりにサッカー部は強いって話だったんですよ?それなのに相手チームにボールに一度も触れさせずに勝っちゃうなんて。さすが鬼道さん!」
「勝利こそが全てだからな」


満更でもないように言う鬼道さんもまたかっこいいなあ。そう思い鬼道さんとばかり話していられないことを思い出した。他の部員にもドリンクやタオルを配らないと。そう思って話を切り上げてフィールドへ向かおうとする。と、不意に手首を掴まれた。


「なんですか?」
「…みょうじ、今日は総帥に呼ばれていないんだ」
「え?」
「お前がよければ、一緒に帰らないか」


そう言う鬼道さんの表情はゴーグルに隠れて分からない。けれど私はその言葉が舞い上がるくらい嬉しくて思わず頬が緩むのを止めることができなかった。普段は練習が終わってから総帥の所に行って色々話しているから一緒に帰ることはできないんだけれど、今日は別らしい。断る理由もなく、勢いよく首を縦に振った。


「もちろんです!鬼道さんがいいなら是非、一緒に帰らせてください!」
「ああ、楽しみにしている」


鬼道さんの表情が、普段より少しだけ柔らかいような気がした。見間違いかと思っているうちに私の横を通り抜けていってしまった彼に確認を取ることはできなかったけれど、それでも嬉しくて嬉しくて仕方がなくて、来るべき下校時間を楽しみにしながら私はドリンクとタオルを入れた籠を抱えてフィールドに駆けて行った。



仁和様へ(鬼道有人/帝国時代/甘)



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