「バーンさま、グランさまがお呼びです。今後のことでお話があるとか」
「あ?ンなもん面倒なだけだろ、ほっとけ」
「え…いや、でも…」
「そんなことよりなまえ、ちょっとこっち来いよ。暇なんだ、話し相手になれ」
「あ、あの、バーンさま…」


片腕を引かれてバーンさまの自室へ片足を踏み入れる。ああ、でもあとでグランさまに叱られるのは御免だしなあ、バーンさまを何とかして連れていかないとなあ、そう思っているとバーンさまに掴まれている腕と逆の腕をぐいっと引かれた。


「なまえ、バーンなんて放っておいてわたしたちだけで行けばいい。後でグランがどうにでもするだろう」
「おい待てコラ。なんでガゼルの野郎が一緒にいんだよ」
「黙れ単細胞」
「誰が単細胞だ!テメェ俺に喧嘩売ってんのか!ああ?」


ガゼルさまを視界に入れた途端不機嫌になったバーンさまは私の腕を離さないまま一歩足を踏み出してガゼルさまに近づいた。私は真ん中に立ったまま、少し背の高いお二人の言い合いを黙って聞くしかないようだ。一刻も早く止めたいんだけど。


「これだから嫌だな、単細胞は。やかましい」
「誰がこうさせてんだよ!大体その寝癖直さずに来ましたーみたいな髪型どうにかなんねぇのか?見てる方が鬱陶しいっつーの」
「…きみに髪型のことをとやかく言われたくないな」
「どういう意味だよ。少なくともテメェよりはマシだと思うがな」
「あの、ガゼルさま、バーンさま…グランさまが…」
「ああ、そうだった。単細胞は放っておいて行こうか、なまえ」
「話は終わってねぇぞ!」


優しく腕を引かれて先を歩くガゼルさまに連れられて私も歩を進める。するともう片方の腕を握ったままのバーンさまが手に力を込めて腕を圧迫された。痛い。でもそんなことを感じさせるより先にガゼルさまより早足で進み始めたバーンさま。狭い廊下に三人横に並んで、しかもバーンさまと私とガゼルさまが手を繋いでいる状態。なんと滑稽なことか。


「…あの、これは一体どういう状況で…」
「俺がなまえと行く。ガゼルは手ェ離せよ」
「何を馬鹿なことを。きみは今行かないと言ったところだろう」
「テメェがいるなら前言撤回だ!」
「お二人とも、できれば腕を離していただきたいんですが」
「聞いたかバーン、なまえはお前に触れられたくないそうだ。さっさと離してやるといい」
「アンタ耳おかしいんじゃねーの?なまえはガゼルに手を離して欲しいらしいぜ」


早足で廊下を歩きながら私を挟んで睨みあうガゼルさまとバーンさま。あの、もう、なんでもいいんで、とりあえず離してもらえると嬉しいなあ。とりあえずグランさまの元には向かってるらしいから、いい方向には進んでいるんだけれど。はあっと溜息を吐いたと同時、バーンさまに引かれていた方の腕をぐんっと引かれたかと思いきや彼がいきなり走り出した。もちろんながらプロミネンスのキャプテンに匹敵する程の体力なんて兼ね備えていない私は引き摺られるようにしてついていくしかないわけで。


「ちょっ、ば、バーンさま!」
「さっさと手離せっつってんだろ、ガゼル!」


ふとその隣を見ればついさっきまで私の斜め後ろにいたはずのガゼルさまがバーンさまの横に並んでいてあからさまに不機嫌な表情をしながらバーンさまを睨みつけていた。ダイアモンドダストのキャプテンもこれまた凄まじい体力を兼ね備えているわけである。私は二人に両腕を引っ張られたままだった。


「きみが離せばいい話だ、バーン」
「ほう、俺とやるってのか」
「上等だ」
「そんなのどうでもいいんで腕離してください!痛い!痛いですから!」


私の叫びは虚しく彼らの足はどんどんスピードアップしていく。ああ、早くグランさまの所へついてくれ。今の私にできるのは、そう願うことだけだった。
グランさまの所についた時、「大丈夫?」と声を掛けてくださったグランさまが神様のように思えた私は、もう精神的に駄目なのかもしれない。



芽衣様(ガゼルとバーン/指定無し)



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