「先輩!」
「どうした?なまえ」
「見てくださいよ、これっ、これ!」


私は手に持ったままのチケットをぐいっと佐久間先輩に突き出した。途端佐久間先輩の眼が輝いて「おお!」と嬉しそうな声が上げる。


「水族館の入館チケット!」
「友達が行かないからって貰ったんです!あのっ、それでもし先輩がよければ、今度の日曜日…」
「なまえ、日曜日の朝10時に駅で待ち合わせな」
「先輩決めるの早っ!」


目を輝かせながら私の手を握る佐久間先輩。いや、嬉しいけど早い!…まあいいか。そう思いながらそういえばとがさがさとポケットを探る。


「実はですね、三枚貰ったんですよ」
「三枚?」
「ですからよければ源田先輩も一緒にどうですか?」
「え、俺か?」


佐久間先輩の横で呆れた顔をしたままの源田先輩にずいっと差し出した。驚いた様子の先輩は少し考えてから次第に優しく微笑んでくれて、そのまま私の手からチケットを取ろうとする。


「ああ、それなら俺も行かせてもら…」


途端私と源田先輩の間を閃光が走る。何事かと思いながらも我に返れば私の手の中にチケットはなく、源田先輩と私の手が宙に浮いているだけとなった。源田先輩と同じ方向に視線を向ければそこにはニコニコと笑顔を浮かべた佐久間先輩の姿。もちろんその片手には一枚のチケットが、ひらひらと。


「源田、そういえばお前、次の日曜日は成神たちとゲーセン行くんだろ?折角の後輩の頼みなんだし、断るなよ」
「え、先輩そうだったんですか?じゃあ無理しなくてもよかったのに!」
「いや、そんな話一言も…」
「源田」


な?そう言って笑う佐久間先輩はじいっと源田先輩に視線を注いでいた。いや、睨みつけていたに近い状態かもしれない。源田先輩の頬が引き攣って「分かった」とだけ言うとそそくさとその場を離れていってしまった。その場に残されたのは呆然とする私と佐久間先輩の二人だけ。


「あの、佐久間先輩…」
「というわけだ。日曜日は俺となまえだけで行こうぜ」
「は、はい…私は構いませんけど」
「なら決まりだ。日曜日、楽しみにしてる」


またな、なまえ。そう言って私の頭を軽く撫でて佐久間先輩は行ってしまった。結局二人きりになってしまった。まるでデートみたいだなあ、と考えて頬が緩む。佐久間先輩は喜んでくれるだろうか、そう思いながら日曜日はどんな服を着ていこうかと心が弾んだ。



星羅様へ(佐久間次郎/後輩ヒロイン)



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