「みょうじってさ、風丸と付き合ってるんだって?」


授業も終わり昼休み。さあお弁当を食べよう!そう思って教科書を机に閉まった途端私の前でそんな声がした。ゆっくり顔を上げるとそこにはニコニコ爽やか笑顔の一之瀬くん。え、な、なんでそんなこと急に、言ってくるんだろう。


「え、あ…そ、そう、だよ」
「ふーん、本当だったんだ。一緒に帰ったりしてるの?」
「う、うん…たまにね」
「へえ。知らなかった!だからよく部室の近くに居たんだ」


よく見るなあと思ってたんだ。そう言って一之瀬くんは何時の間にか私の前の席に腰掛けて相変わらずの爽やかな笑みを此方へ向ける。どうして一之瀬くんは急にこんなに私に話しかけてくるんだろう。私は風丸くんとお弁当食べる予定なんだけどなあ…でも抜けるに抜けられない。目を泳がせているとざわつく教室の中がたっと椅子が床に擦れる音がした。一之瀬くんの方を見ると立ち上がって私の机に片腕を突き、上からじっと此方に視線を注いでいる。


「みょうじって可愛いよね」
「は、…え?」
「前から思ってたんだ。笑った顔がいいなって」
「そ、それは…どうも…」
「風丸のだなんて、勿体無いなあ…」


小声で言った言葉に目を丸くした。一之瀬くんはその場を動こうとしない。私には返す言葉もない。どうしよう、どうしよう。多分これって、すごくヤバい状況だ。


「い、一之瀬くん、あの…」
「さすがにやりすぎだぞ、一之瀬」


不意に聞き覚えのある声が届いたかと思いきや一之瀬くんの身体がぐいっと横に押された。私の目の前にいたはずの一之瀬くんは気付けば私の斜め前まで押し出されていて「ちぇっ」と肩を竦めている。顔を上げるとやっぱり見覚えのある青い髪が揺れていて、その表情は私の方からは見えなかった。


「冗談だよ、冗談。風丸の彼女って聞いたからちょっと気になっただけ」
「そうか、じゃあもういいだろ?俺はなまえと一緒に昼食べるから、邪魔するな」
「はいはい、わかりましたー」


またね、みょうじ。そう言ってひらひらと手を振りながら一之瀬くんは自分の席へ戻っていった。嵐のような人だと思いながら不意に風丸くんが私の名前を呼ぶ。顔を上げると同時に額に感じたのは柔らかい感触。近くにいたクラスメイトから黄色い声が上がって気付いた。そ、そうだ、此処は、教室!


「かっ、かぜ、風丸…くん…!?」
「あんまり妬かせるなよ。お前は俺のなんだから」


そう言う風丸くんの頬は何処となく赤く染まっていて、なんだかそんな風丸くんを見てると温かい気持ちになって。自然と頬が綻んで笑みが零れた。風丸くんが私の腕を掴む。


「お、屋上行こうぜ」
「う、ん」


そう言って風丸くんに引かれるまま立ち上がり教室を出ようとすると後ろから聞こえるのは冷やかしの声。ああ、もう!恥ずかしい!そう思いながらも私の心は幸せな気持ちでいっぱいだった。




匿名様(風丸一郎太/若干一之瀬とVS気味)



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