※ヒロインはガイア




「デザームさ、雷門と戦ってどうだったの?やっぱり楽しかった?」
「そうですね、悪くはありませんでした」
「ふーん。いいなー、私も戦いたいなー」
「なまえ様が戦ってもこの気持ちは味わえないと思いますが」
「…何気に私のこと馬鹿にしてる?デザーム」
「いいえ、そんなことは…」


…そこから先を言わない辺り、きっと彼はそう思っているんだろう。相変わらず可愛げのないやつだと思った。けれどそんなことを気にし始めると終わりが見えない。私は溜息を吐いて目を背けた。


「ああ、そういえば」
「ん?なに」
「なまえ様に頼みたいことがありまして」


そう言って真剣な表情をするデザームに私はごくりと生唾を飲み込んだ。こんな真剣な表情をしたデザームは初めてだ。頼みごとがそれだけ深刻なことなんだろうか、私も真剣な表情で私より背の高い彼の眼を見つめ返す。


「実は…」
「うん」
「マキュアが駄々を捏ねまして」
「…うん?」
「ケーキが食べたいと言っていたのでシュークリームを買って渡したらケーキじゃないから要らないと言って機嫌を損ねてしまって。しかし私は女の好みなんて分かりませんし甘党でもない。ということでここはマキュアと同性であるなまえ様に聞くのが正しい選択かと」
「なんでケーキって言われてシュークリーム買ったの」


っていうかなんだったんださっきまでの真剣な表情は。デザームはそこまでマキュアに手を焼いているということか。頬が引き攣りながらも一応続きを聞こうと促した。


「なまえ様ならどんなものがお好きですか」
「え、私はショートケーキが好きだけど」
「じゃあそれでいいですね」
「そんな簡単に決めていいの?」
「なまえ様が選んだと言えばいいでしょう」
「それだとマキュアに文句言われるの私じゃん」
「何か問題ありますか?」
「大有りだよこの野郎」


なんで矛先を私に変えてるんだ!っていうかデザームってイプシロンだよね。ファーストランクだよね。私ガイアだよ?マスターランクなんですけど一応。なんか扱いが酷いような気が。そう思い煮え切らないままでいると何処からか取り出したメモにデザームがなにやら文字を書き始めてそれを私に突き出した。訝しげに顔を顰めながらもそれを手に取る。そこにはショートケーキ×12とだけ書いてあった。


「…なにこれ」
「あ、代金は払いますので、ご安心ください」
「いや、何も安心できないし。なにこれ」
「おつかいメモですが」


おつかい初めてですか?と言いながら笑みを浮かべるデザーム。ああ、笑みじゃない。今のは嘲笑だ。


「なんで私が行かなきゃいけないの。行くわけないでしょ!」
「あ、なまえ様の分も買っていいので」
「えっ」


そう言って私の手の上でデザームが12に二本線を入れて横に13と書いた。…当初の予定に私の分は含まれてなかったのか。それなのに私に買いに行けと言っていたのか。こいつ本当に私より身分が低いってこと分かってるんだろうか。
…でもショートケーキがタダで食べれるなら…と思う辺り、私にはパシリの素質か何かがあるんじゃないかと思ったそんなとある昼下がりの出来事。


「はい、買ってきたよー」
「マキュア、ショートケーキよりチョコケーキのが好きー」
「えー」



ナナシ様(デザーム/上の立場のヒロイン/敬語なのに偉そうなデザーム)



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