「バーンは愛ってものをよく分かってないよ」
「はあ?」


さっきまでむすっとした顔のまま口を閉ざしていたかと思えばこの女、みょうじなまえは唐突にそんなことを言ってきやがった。眉間に皺を寄せてそちらへと視線を移せばそこには俺と同じように眉間に皺を寄せているなまえがいるわけで。


「なんだよ、急に」
「バーンと恋人になってから今までのことを考えてたの」
「へえ」


つーか、普通それならもっと幸せそうな顔するもんだろ。俺はなまえに不自由な思いをさせているつもりはないし、むしろ自由にさせてやってるつもりだ。俺は少なくとも今までを思い返してなまえみたいな表情になることは、ない。多分。


「バーン、私にあんまり好きって言ってくれない!」
「…あ?」
「そりゃあ態度でそれを示してくれてるのはわかるけど…やっぱり言葉が一番大事なんだから!それがないからバーンは愛を分かってないって言ってるの!」
「なんだそれ」


本当にこいつはよく分からないやつだと思う。今だって一人で勝手に捲くし立てて怒っている。さてどう静めようか、そう考えながら俺は後頭部を乱雑にがしがしと掻いた。


「あー、めんどくせえ…」
「なによ、めんどくさいって!私はこれでも真剣に、」
「やっぱお前は馬鹿だな」
「はっ…はぁ!?」


顔を真っ赤にして喚くなまえの肩をぐっと押さえ顔を近づけると次から次へと刺々しい言葉を発するその唇を塞いでやった。離れる瞬間に唇を舌先でちろりと舐めてやれば甘ったるい声を漏らすなまえ。それを聞き気分が良くなり、俺はにいっと口角を上げた。


「好きじゃねえヤツにこんなことしねえだろ、普通」
「な、…ばっ…!」


みるみるうちに顔を真っ赤にしていくその様子が面白くて仕方がなく俺は笑いを堪えるのに必死だった。なまえは完全に言葉を失ってしまったらしく視線を彷徨わせて何も言わぬまま俯く。さっきまでぎゃあぎゃあと喚いていた様子からは想像できないほど大人しく、なんだか滑稽だった。
まあつまり、あれだ、なまえには歯の浮くような台詞を並べるより、行動で俺の気持ちを示した方が伝わりやすいってこと。


愛故にってやつ



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鈴さまへ

100311

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