「さっむいねー」


はあっと息を吐き出せばそれは白くなって空気に溶けていく。空気を吸い込むと身体の中から冷えてしまいそうな気さえして、小さく身震いした。声がした方へ視線を向けると俺よりも少し背の低い彼女、みょうじなまえが自分のマフラーに顔を埋めていた。


「此処まで寒くなるとはな」
「うん。あーあ、早くあったかくならないかなあ」
「…お前、夏には早く冬にならないかなーとか何とか言ってなかったか?」
「気のせい気のせい。今は温もりが恋しいんですー」


以前まったく逆の会話をしたことを思い出しながら思わず苦笑を浮かべた。都合がいいなと呟けばうるさいと一言。そう言いながら彼女は寒さで赤くなった両手を軽く擦り合わせた。


「あれ、手袋してないのか?」
「んー、探したんだけど見当たらなくて。ちょっと寒いけど、でもマフラーがあるから大丈夫」


へらりと笑うその鼻先も手と同じく赤くなっていて、マフラーで半分隠れた頬も同じ色をしていた。そういう俺も手袋をつけているわけではなく、そういえば手が寒いなと思いながらなまえの真似をするように手を擦り合わせてみる。それでも特に温もりを得たわけでもなく、どうしようかとぼんやり考えた。ああそうだ、こうすればいいじゃないか。


「手、真っ赤だぞ」
「…風丸?」


俺はなまえの両手を取り少し力を込めてぎゅっと握った。そのまま口元に近づけるとはあっと温かい息を吐き出す。驚いたような声を出すなまえに小さく笑みを浮かべて、そのまま温もりを逃さないように、もう一度強く握った。


「こうすればお互いに温かいだろ」
「…うん!」


なまえの頬が少しずつ緩んで、次第に嬉しそうな笑みを浮かべた。彼女の手を一度離すと、今度はその片手を自分のと絡めるようにして握る。すぐになまえの方からも握り返してくれて、触れ合う手のひらから温もりが伝わった。


「温かいものでも飲みに行こうぜ」
「さんせーい!」


そう言って笑いあった今日は、他愛ないけれど愛しい、そんな一日。



白い息と赤い頬

(寒いけど、心はあたたかいよ!)



***
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