※合体後吹雪
※先輩ヒロイン




「なまえさん、卒業おめでとうございます」


その声に振り向くとにこにこといつもの笑みを浮かべている吹雪士郎くんが立っていた。彼は私より一つ年下で、確か二年生だったと思う。だからさっきまでの寒くて長い卒業式にも出席していたはずだ。「ありがとう」そう言って笑うと吹雪くんはゆっくり私の方へ近づいてきた。


「もう学校でなまえさんを見かけることはなくなるんですね」
「そうだね、卒業しちゃった」
「でも無事に卒業できてよかったです」
「失礼なやつめ」


そう言って軽く額を叩いてやると少し眉尻を下げて笑った。私は吹雪くんのことを小さいころからずっと見てきた。家族がいなくなったこと、自分の中に弟を作り出したこと、宇宙人と戦うために雷門キャラバンに参加したこと、『完璧』という言葉の本当の意味を理解したこと、アツヤと別れたこと。吹雪くんは巻いていたマフラーをゆっくり外しながら口を開く。


「なまえさんが卒業できたのと同じように」
「うん」
「僕もちゃんと、卒業できたんです。アツヤから」
「…そっか」


するりと吹雪くんの首からマフラーが落ちる。その手に握られたのはもこもこしてて白い、マフラー。


「卒業おめでとう、吹雪士郎くん」
「…なまえさん…」
「成長したね」


そう言ってゆっくり吹雪くんの頭を撫でた。すると驚いたように見開かれた瞳がゆっくりと孤を描き、一度頷いて、ぽろりと一粒の涙が零れた。悲しいんじゃない、苦しいんじゃない、今吹雪くんが泣いている理由は、きっと、


「なまえさん、大好きです。アツヤとしても、士郎としても、ずっと言いたかった」


吹雪くんは手にしていたマフラーをそっと私の首にかける。もこもこしていてとても気持ちいいそれに私は自然と笑みを浮かべた。鼻の奥がツンとする。


「私も大好きだよ。ありのままの吹雪くんが」


ぽろりと頬を伝う涙と裏腹に、私はゆっくり笑みを浮かべる。私は吹雪くんの両頬を手で覆うと、また新しい涙を一粒零しながら、吹雪くんはもう一度同じ言葉を紡いだ。


「卒業おめでとうございます、なまえさん」


北海道ではまだ桜の花なんて見れないけれど、それを補うほど力強く、私の制服の胸ポケットに挿されたピンクのカーネーションが、鮮やかに天を向いていた。



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