「願いは口にしなきゃ叶わないんだって」


唐突に俺の隣にいたみょうじなまえがそんなことを言い出した。どうしたの急に、そう返すと彼女はにっこりと笑いながら口を開く。


「一之瀬くんはいろいろ願い事、言ってるでしょ」
「うーん、そうかも」
「私ね、一つだけ言ってない願い事があるんだ」
「みょうじの言うことが本当なら叶わないんじゃない?それ」
「そうなんだよねえ」


だから今言おうと思います!びしっと腕を天へと伸ばして宣言した彼女に俺はぽかんと口を開けるだけ。暫くして我に返ってからゆるゆると苦笑を浮かべて伸ばされたままのみょうじの腕をそっと掴み、下ろす。


「うん、じゃあ言ってみてよ」
「聞いて後悔しない?」
「そういう内容なの?」
「なんていうか…その…」


えっと。そう口を間誤付かせながらみょうじはそっと俯いた。いつもはこんな仕草を見せない彼女らしくないなと思いながら次の言葉を待っていると急にぱっと顔を上げたみょうじと至近距離で目が会う。


「私、一之瀬くんの彼女になりたい」


その白い頬が赤く染まっていて、いつもは強気な色を灯す瞳が何処か不安げに揺れていて、ふよふよと視線が漂った後、地面へと落ちた。ゆっくりみょうじの今の言葉を脳内でリピートする。次第に俺の頬が緩んでいくのを感じた。


「口にしたから叶ったね」
「え?」
「俺も、みょうじの彼氏になりたい」


そう言った途端情けない笑みを浮かべたみょうじがなんだかおかしくて小さく笑みを零してから、俺はその真っ赤な頬を両手で包み込んで。随分と可愛らしい言葉を発するその唇にキスをした。



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