感情表現が豊かな人間に憧れているんだ。にっこり笑いながら風丸は私にそう言った。私から見て、そういう風丸は全然感情表現に乏しい人だとは思わない。いっぱい笑ってるし、怒ってるし、泣いてるところは…見たことないけれど、でも十分感情を表に出していると思う。


「風丸くんは十分豊かだと思うけどなあ」
「ははっ、そうでもないさ」


今だって爽やかに笑っちゃって。その笑みに思わず頬が緩む。


「俺さ、みょうじみたいになりたいんだ。」
「私?」
「そう、お前。いつも俺の隣で笑っててくれるみょうじなまえ。みょうじは感情表現が豊かだろ?だからまずはそこから始めようかと思って」


風丸くんの手が私の髪に触れて、それが滑って頬に触れ、最後には綺麗な指先で唇をなぞられる。ふにゃりと表情が緩むような気がした。すごく心地良い。


「お前が傍にいると、すごく落ち着くっていうか。逆に言えばいないと苛々するくらいでさ」
「何それ」


笑みが漏れて、肩が震える。ああ、私は今とても幸せなんだなあ。そう思った。そこでとあることに気付く。私の頬に触れている風丸くんの手に私の手を重ねてじっとその透き通った瞳を見つめた。


「私は、風丸くんみたいになりたいよ」
「俺みたいに?」
「うん。風丸くんが傍に居てくれると、私はとてもふわふわして温かい気持ちになるんだよ」


不思議だね。そう言って笑えば、風丸くんも不思議だなと言って笑う。


「風丸くんになりたいなあ」
「俺はみょうじになりたい」
「交代できたらいいのにね」
「んー、でもみょうじにこうして触れられなくなるのは嫌だな」


私の唇に触れた柔らかい風丸くんの唇。少し熱を帯びていて、ふわふわして、気持ちよかった。そうだ、と小さく声をあげて風丸くんを見上げる。続きを促すように首を傾げる風丸くんに、私は笑いながらこう言った。


「今がこうして幸せなんだから、やっぱり今のままが一番なのかも」
「…そっか」
「ねえ風丸くん、もう一回キスして」


いいよ、そう言いながら微笑む彼の言葉は今日も、甘い。



100204/恋愛中毒チルドレン

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