「だから、ここはこうして」
「こうじゃわかんないよー」
「それはなまえちゃんが手元を見ていないからでしょ」
「うっ」
「ほら、ちゃんと教科書を見て」


本日何度目かの溜息。吐きたいのはこっちだと思いながら僕は目の前で教科書と睨めっこする彼女、みょうじなまえちゃんを見つめた。彼女は頗る成績が悪い。だから僕にせめて数学だけでも教えてくれと迫ってきたのだった。で、仕方なく見てあげてるんだけど…まさか此処まで出来ないとは思ってもみなかったわけで。


「吹雪くん、分からないよー…」
「とりあえずこの問題解いてみて」


はあい、と間延びした返事が耳に届いてようやく今まで動いていなかったシャーペンが白いノートにさらさらと数字を書き込んでいく。それを横から見て、僕は思わず堪えていた溜息を吐いた。


「全部違うよ」
「えー!う、嘘だ…」


途方にくれたような表情を浮かべる彼女を見て、僕はふといいことを思いつく。なまえちゃんと小さく名前を呼ぶと僕はその頬に軽く手を添えた。


「え、なに、吹雪くん」
「ん」
「!」


ちゅ。
その柔らかい唇に一度触れるだけの口付けを落とす。すぐに顔を離すとみるみるうちになまえちゃんの頬が染まっていって、口を金魚のようにパクパクとさせた。そんな彼女に向かって僕はにっこりと笑いかけてみせる。


「一問間違える度に、キス一回ね」
「えっ…ええ!そ、そんなのこれから何回することになるか、」
「途中で僕の理性が飛んじゃわないように、頑張ってねなまえちゃん」
「そんなあ…」


青い顔をするなまえちゃんと対照的に、僕の心は晴れ晴れとしていた。さて、これからこの問題集を解き終わるまでに僕は彼女に何回キスすることができるのだろうか。それから脆い理性を何処まで保つことができるのだろうか。まるで他人事のように考えながら、必死になるなまえちゃんの横顔を頬杖を突きながら見つめた。


「あ、ここ間違えてるよ」
「えええっ!?ま、まま、待って!」
「はい、キス一回ねー」
「こんなの無理ー!」




100121

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