※ちょっとアニメのネタバレ
「かぜ、まる」
そのか細い声は俺が何よりも大切に思っているものだった。いつもは笑顔を浮かべてる顔には哀しみがたくさん含まれていて、声だって震えている。全て俺が原因だと分かっていても、俺は何も言うことができなかった。
「嫌だよ。風丸、行かないで…」
「ごめん、なまえ」
俺にはみんなが眩しすぎたんだ。そう言えば哀しみでいっぱいだった瞳が揺れた。大きな瞳から零れる涙を拭う役目は、もう、俺じゃない。
「もう無理だよ、俺は…」
「大丈夫だよっ、風丸はまだまだ強くなれる!もっと努力すれば、これからも、」
「頼むからこれ以上、」
俺を追いつめないでくれないか。
なまえの目が大きく見開かれて、また大粒の涙が零れた。
「最後までお前を守ってやれなくてごめん、」
「か、ぜ…まる…」
「…本当、ごめんな…」
呆然とするなまえの肩に一度軽く触れて、俺は彼女に背を向けた。砂の音がじゃり、と響いてなまえと俺との距離が開いていくのを教えてくれる。もう戻れない。彼女のところにも、以前のような前向きな自分にも。
「もう早くなんか、なれないんだ」
呟いた言葉がまるで他人事のようで、虚ろな瞳のまま、俺は弱弱しく手のひらを握り締めた。
ごめんね、さよなら
(次に逢うときまでにもっと強くなっていたら、その時は、)
100120/ごめんねさよなら