※名前変換無し
俺には幼なじみの女の子がいる。小学校から知っている子で、俺はずっと前からその子に恋をしてきた。そんな彼女が、今、照れたような笑みを浮かべながら俺の目の前に立っている。
「えへへー。いいでしょ、風丸くん!とうとう私にもモテ期ってやつが来ましたよ!」
そう言って掲げるのは一枚の白い封筒。俗に言う、それはラブレターというものらしい。中身を読んでにこにこと嬉しそうにしている彼女を前に俺のテンションは下がる一方だった。何故ずっと片想いだった彼女を、こんな見ず知らずの相手に横取りされなくてはならないんだ。俺の方が絶対彼女を想ってきた月日は長いはず!そう思うとどうにも居た堪れない気持ちになる。
「こういうのってちゃんと行くべきなのかな?」
「さあ。返事によるんじゃないか?」
「返事かあ…」
この人のことよく知らないしなー。首を傾げる彼女を見ていると更に苛立ちは募っていく。これだけ長い間一緒にいたと言うのに、どうして彼女は俺の気持ちに気付かないんだろう。…否、長い間一緒にいたからだろうか。幼なじみだからこそ気持ちに気付けないと何かとよく聞くような気がする。これから彼女はそのラブレターの差出人の相手の所へ行ってしまうのか。俺の長年の恋は無惨にも散ってしまうのか。思わず溜息が漏れた。
「あー、でもね」
「ん?」
「一応答えは決めてあるんだ」
眉尻を下げて笑うその仕草も、薄らと頬を染めるところも、俺はずっと見てきたというのに。だからと言って今から自分の気持ちを告げるには遅すぎる気がするのと、情けないのとで結局言葉は出なかった。不意にがさがさと彼女が鞄を漁って先程の白い封筒とは違う、ピンク色の封筒を取り出す。それを俺の前にあった机に置いて、彼女はもう一度照れ臭そうに笑った。
「それじゃあ、この手紙くれた人のとこに行ってくるね」
そう言って踵を返すと俺が返事を返す前に部屋を出て行ってしまう彼女。一体何なんだ、そう思いながら置かれたピンクの封筒を開いてみる。中に入っていた一枚の便箋に女の子らしい丸く綺麗な文字で綴られていた言葉を見て、俺は頬が緩んでいった。
見ず知らずの男のところになんて行かせない。すぐに追いかけて、見つけたら…そうだ、見つけたら思いきり背中から抱きしめてやりたい。それからちゃんと、気持ちを伝えるんだ。
『風丸くんのことが好きです』
俺もずっと、お前のことが好きだったんだって。
初恋ラブレター
(世界中の誰よりも、君が好き!)
100118/初恋ラブレター