ターゲット発見。距離確認。片足で地面を蹴り、私は大きく腕を伸ばす。そして、そして、


「どーもーん!」
「うおっ!?」


その細い腰に今日も後ろから腕を回した。ぎゅうっと腕に力を込めればちょうど私が抱きしめやすいサイズ。ああもう、この抱き心地が堪らない!


「はぁー…土門の腰最高!」
「なまえ、お前なあ…傍から聞けばただの変態だぜ?」
「変態でもいいもん。私には土門の腰さえあれば…」
「腰だけでいいのかよ」
「ジャストサイズ!」
「話聞いてる?」


呆れたような顔で振り返る土門を尻目に私はその背中に頬を擦り寄せた。驚いたような声が頭上から聞こえるけれどそんなの気にしてなんていられない。この細い腰がちょうど抱きしめやすくて、大好きなんだよなあ。緩む頬もそのままに腕に篭めた力を少し弱める。


「おまっ…なまえ!」
「んー」
「いい加減離れろよ!」
「えー」
「早く」
「やだ」
「はあ?」
「もうちょっとー」


そう言っていると不意に今の土門の服装が制服じゃなくサッカー部のユニフォームであることに気付いた(腰しか見てなかったから気付かなかった!)。ユニフォームかあ、と小さく呟くと思わず顔がにやける。その呟きを理解できなかったのか土門がきょとんとしているけれど、そんなことは私の知ったことじゃない。私はさり気なくユニフォームの上着の隙間から手を忍び込ませた。


「なっ、なにして、」
「ふっふっふー。土門の腰を生で抱きしめてみようと思いまーす」
「お前っ、此処部室の前だぞ!?」
「そんなの知りません」
「少しは考えろ馬鹿!」


じたばたする土門と逆に、私はユニフォームの上着の下から土門の腰をぎゅうっと抱きしめた。あ、やっぱり生が一番いいよ、生が。この細さ最高!と言うと上からまた「離せ!」との声。えー、でも離すの勿体無いなあ、こんな素敵な腰。離れたくないなあ、離れたくないなあ、


「土門の腰が愛しいです」
「…分かったからとりあえず離れてくれ」
「もちろん土門も愛してるよ!」
「早く手を抜け!」

「あ」
「あ?」
「どーも、秋ちゃん!」


顔を上げればそこにはぽかんと口を開けた木野秋ちゃん。両手に抱えていた真っ白のバスタオルをぼふんと地面に落として硬直している彼女に軽く手を上げて挨拶してみせる。「あ、あの、その、えっと、」と口を金魚のようにパクパクしている秋ちゃんの顔が少しずつ赤く染まっていった。頭上から土門の焦る声。
二人とも急にどうしたんだろうと思いながら、私はもう一度土門の腰に回したままの腕に力を篭めた。


ぎゅうっ!

「じ、邪魔してごめんなさい!」
「ちょっ、ま、まっ…待って秋ー!」
「ありゃ?秋ちゃんどうしたんだろうねえ」
「お前のせいだからあああ!」




100118/ぎゅうっ!

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