「おい、もうガゼルの奴と話すな」
「…はあ?」


急に部屋に入ってきたかと思えば第一声がこれだ。まったく、バーンの行動は分からない。きょとんとしたままの私に大股で近寄ってきたバーンはそのまま私の前まで来るとぐっと強く顎を掴む。あ、痛い痛い痛い、


「痛い」
「返事しろ」
「したいけど痛、いたたたた!」
「早く」
「だから痛い!顎痛い!」


時間が経てば経つ程その指先に力が篭められ、私はなんとかバーンの手から逃れようとした。結局叶わなかったけれど少し力を緩めてくれたらしくほっと息を吐く。それから恨めしげに見上げた。


「急にどうしたの、なんかあった?」
「あ?なんでもねえよ馬鹿」


今日のバーンは頗る機嫌が悪いようだ。顔が不機嫌に歪められていて、緩んだとはいえ私の顎を掴む指先に篭められた力は半端ない。っていうか顎が嫌な音を立ててるんだけど、これやばいって。



「ねえバーン、」
「うるせえ喋んな」
「返事しろか喋んなかどっちかにしてもらえると助かるんだけど…」
「喋んなっつってんだろ」


またその指に力が篭められそうになったのを感じ取ると素早く頭を後ろに引いてそれから逃れる。小さな舌打ちが聞こえたけれどバーンはそのまま手を引いた。よかった、顎がこれ以上嫌な音を立てる必要はない、と。そう思っていると目の前のバーンの顔に急に影が掛かって静かになる。次は一体なんだ。


「…気に喰わねえんだよ」
「なに、が」
「ガゼルとお前が楽しそうに話してるのが」


…なあんだ、それってただの。思わず顔が緩む私を見た途端バーンは嫌そうに表情を顰めて両手で私の頬を思いきり左右に引っ張った。え、ちょ、顔がひし形になりそう。


「いひゃいー!!」
「うっせー馬鹿!」


頬は痛いけど、でも胸の中はぽっかぽかだ。バーンは可愛いなあと思いながら、私はその後頬が真っ赤に腫れるまで引っ張られ続けた。
それにしても彼は些か、


横暴だなあと思います。

(もうちょっと優しくしてくれてもいいのに)(殴るぞ)(ごごごごめんなさい冗談です)



100110/横暴

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