※ヒロイン→一之瀬→秋⇔円堂





ああそうだね、叶わない想いだって知ってた。だって彼が秋ちゃんを見る目が違うっていうのなんて、部内の誰でも知ってる話。知らないのは円堂と秋ちゃん本人くらいじゃないかなあ。分かってる、分かってるんだ、彼には秋ちゃんしか見えてないんだって。


「一之瀬、お疲れ様」
「ん、サンキュ、なまえ」


明るい笑顔を浮かべて私の手からタオルを取る一之瀬。ふと視線を向けた先、彼の視線が揺れた。秋ちゃんとキャプテンが楽しそうに話している、姿。じっと一之瀬を見つめているとそんな私の視線に気付いたのか、彼は何とも言えないような苦笑を浮かべた。


「片想いって案外つらいんだなあ」
「…そうだね」
「俺も早く新しい恋、見つけないと」


明るく言って背伸びする一之瀬。そうだよ、片想いはつらいんだ。目の前で傷付いている一之瀬に何も言えない私も、つらいんだよ。心臓がきゅうって締め付けられて、ねえ、分かってる?友達としてじゃなきゃあなたと一緒にいられないこの悲しみが。ねえ。


「みょうじはいないの?好きな人とか」
「えっ」
「はは、ごめんごめん。女の子にこういうこと聞いちゃ駄目だよな」


乱雑に私の頭を撫でる一之瀬の手。やめてよ、と小さく反論すればそれは離れていって、ほっとした反面、何処と無く悲しくなる。一之瀬の顔を見れば、彼はやっぱり悲しそうに笑っていた。一之瀬が新しい恋を見つけたら、私はまた苦しくなるんだろうか。悲しくなるんだろうか。


「練習、戻らなきゃ」
「うん。頑張って」
「いつもありがとう、みょうじ」


それだけ言ってひらりと手を振った一之瀬はそのままグラウンドへと駆けて行く。言いたいけど言えない私は、ただの臆病者だと思った。一之瀬が傷付くのを見たくないからなんてのはただの言い訳でしかなかった。彼の傍に居られなくなるのが怖い、ただそれだけだ。


「ほんと…片想いってつらいよね」


誰に言うわけでもなくそう零せば、ほら、私は一之瀬と同じ表情を浮かべられた。



一方通行

(ねえ、一度でもいいから、私を見てよ)



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