首を横に振った。ずきずきと胸が痛む。


「なまえ、」
「もう、言わないで」
「俺はなまえが好きなんだ」
「何度も言ってるでしょ、私は、」
「なまえ」


彼は、一之瀬一哉くんは何も聞いてはくれなかった。胸が痛む私は鳴りそうになる歯を噛み締めて、俯く。


「どうして、断ってるのに、何度も言ってくるの」
「ちゃんとした理由を聞いてないから」
「っ…それは、」
「教えろよ、なまえ。そしたら俺、諦めるから」


顔を上げると悲しそうな表情をした一之瀬くん。乾いた下唇を舐めて、私は口を開いた。


「付き合うことがなければ、別れることもないでしょう?」
「…うん」
「一之瀬くんとは、これから先、ずっと一緒にいたいの」


彼がずっと傍にいてくれるとしたら、それは友達ではないのだろうか。


「だから、わたし、」
「別れが怖くて、恋なんてできないだろ」


視線の先の一之瀬くんはさっきみたいな悲しそうな表情じゃなくて、いつもの笑顔を浮かべていた。とくん、と、私の中の何かが跳ねる。


「俺、これから先、なまえの友達としてずっと一緒にいるなんて、耐えられない」
「一之瀬、く、」
「俺はなまえのことが好きだから。なまえにも俺を好きになって欲しい」


その時ようやく分かった。私は彼を友達として見ていたわけじゃない、私も彼のことが好きなんだって。


「一之瀬くん、私が一之瀬くんを好きだって言っても、これからずっと一緒にいてくれる?」
「もちろんだよ、なまえ」


私は一之瀬くんから、恋を学びました。



恋とは即ち、

(自分の気持ちと向き合うということ)



100109

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